ECサイトをグローバル展開することで、インバウンド需要との相乗効果も見込めます。なぜなら、日本を訪れた外国人観光客に商品を気に入ってもらえれば、帰国後もECサイトでリピート購入してもらえるからです。日本製品は「メイドインジャパンブランド」として海外でも人気があり、日本を訪れた知人の紹介で商品を購入してもらえることもあります。ECサイトをグローバル展開することで海外からも手軽に商品を購入できるようになるため、ユーザー獲得機会を逃さず、売上アップにつながります。

日本市場と海外市場では異なる部分も多いため、ECサイトをグローバル展開して売上をアップさせるには、ターゲット市場に合わせて入念に準備する必要あります。

 

〇市場調査

ECサイトをグローバル展開する場合、事前の市場調査は必須です。なぜなら、日本で売れ行きが好調な商品であっても、海外で同じように売上を伸ばせるとは限らないからです。ECサイトをグローバル展開して売上をアップさせるには、海外ユーザーのニーズを把握し、需要の高い国や地域に進出する必要があります。ターゲットとなる国や地域はさまざまですが、まずはECサイトの市場規模が大きい中国とアメリカの市場調査をするとよいでしょう。

 

経済産業省の調査によると、中国ではグローバル展開のECサイトで購入したことがある日本製品の第1位が化粧品、第2位が日用品、第3位が食品となっています。一方のアメリカでは、第1位が衣料品・アクセサリー、第2位が玩具・趣味用品、第3位が図書などの教育用品です。このデータからもそれぞれの国によって日本のECサイトに対するニーズが異なることがわかります。そのため、自社のECサイトで取り扱っている商品に合わせて進出する国を選ぶことで、効率よく売上アップを目指せます。

 

〇マーケティング戦略

ECサイトの売上をアップさせるには、マーケティング戦略が欠かせません。ECサイトをグローバル展開する際のマーケティング戦略として、インターネット広告やSNSの活用が有効です。ただし、国や地域によって文化や価値観は異なるため、ターゲットに合わせた適切な戦略をとることが重要になります。

 

たとえば、中国ではGoogleやInstagramなどのプラットフォームが規制されており、独自の検索エンジン・百度（バイドゥ）やSNS・Weiboが広く普及しています。そのため、それぞれのプラットフォームに対して個別に対応することでECサイトに集客する必要があるのです。また、中国では奇抜で大胆なデザインが好まれる傾向にあります。インターネット広告用にECサイトのバナーを作成する際は、ビビッドカラーやユニークな画像などを使用して、ユーザーの目を引くデザインにすると集客力が高まり、売上アップが期待できるでしょう。

 

一方、アメリカでは日本よりもFacebookの利用率が高く、Facebook上で商品の売買ができるMarketplaceの人気も高いです。そのため、Facebookの運用に力を入れることでECサイトの売上アップにつながります。また、アメリカでは検索エンジンを利用する際、文章ベースで検索する傾向にあります。具体的には、「抜け毛を予防できるシャンプー」を知りたい場合、日本なら「シャンプー 抜け毛」のように単語を組み合わせて検索します。ところがアメリカでは、「抜け毛を予防できるシャンプーは？」のように具体的な質問を入力することが多いです。したがって、アメリカで効果的にマーケティング活動を行うには、キーワードの検索意図を細かく分析してECサイトに誘導する必要があります。

 

このように、国や地域によって普及しているプラットフォームや利用方法が異なるため、日本と同じ戦略でECサイトの売上を伸ばすのは困難です。ECサイトのグローバル展開を成功させるには、ターゲットの文化や価値観を理解し、最適化したマーケティング戦略を立案しましょう。

 

〇多言語対応

ECサイトをグローバル展開する場合、ターゲットとなる国や地域の言語に対応する必要があります。ECサイトのトップページや商品ページはもちろんですが、カスタマーサポートや会員登録ページ、購入手続きページなどの対応も忘れてはいけません。

 

コスト削減のため翻訳ソフトを使用して機械的に翻訳しようと考えるEC事業者も多いですが、ECサイトの売上アップを目指すなら翻訳業者に依頼することをおすすめします。翻訳ソフトを使用すると不自然な文章になることが多く、ユーザーが違和感を抱くことでECサイトの信頼性を損なう原因になるからです。会員登録ページの「フリガナ」や「和暦での生年月日」のように、日本語を単純に直訳しただけでは意味が伝わらない部分もあります。

 

翻訳業者に依頼すれば、海外のユーザーにもわかりやすい自然な文章に仕上がるため、違和感なくECサイトを利用できるようになります。文章の自然さはECサイトの信頼性向上やユーザーの離脱防止の効果があるため、売上アップの重要な要素のひとつです。ECサイトをグローバル展開する際は、コストをかけてでも多言語対応の質にこだわりましょう。

 

〇決済方法

国や地域によってECサイトで主流の決済方法は異なるため、グローバル展開を成功させるにはターゲットに合わせた決済方法に対応しておく必要があります。もしユーザーが希望する決済方法を選択できなければ、ECサイトの商品に興味を持ってもらえたとしても購入してもらえないからです。たとえば、日本のECサイトではクレジットカード払いが一般的ですが、中国ではクレジットカードが普及しておらず一部の富裕層しか所持していません。広く普及しているのはデビットカードの銀聯カードやQRコード決済のAlipayがあります。

 

ECサイトをグローバル展開するのであれば、海外のユーザーに使いやすく、多通貨間でスムーズに決済できることが大切です。万が一の事態に備えて、補償やサポートが充実しているとユーザーが安心して利用できます。こうした条件を満たし、グローバル展開のECサイトで広く採用されている決済方法はPayPalです。PayPalはクレジットカードやデビットカード、銀行口座などをアカウントに登録しておけば自動決済できるサービスで、配送トラブルや商品瑕疵が発覚した場合の補償制度があります。世界で3億人以上のユーザーが登録している決済サービスなので、ターゲット市場で主流の決済方法と合わせてPayPalにも対応しておきましょう。