EC売上アップ術
◎第99回 なぜ売れない?ECサイトの課題発見と改善策を徹底解説
ECサイト運用において売上停滞に直面すると、不安感や焦りからどのような施策を打てばいいのかわからなくなってしまう運用者は少なくありません。しかし、現状を冷静に分析して適切な施策を打つなら、現状を打開して売上を改善させることが可能です。この記事では、ECサイトの売上が停滞する原因と、課題の発見や改善につながる具体的な施策などをご紹介します。
◎ECサイトの売上が停滞する原因
ECサイトの売上が停滞する原因には、集客数や購入率が大きく関係しているといわれています。集客数は、ECサイトにアクセスするユーザーの数を指しています。集客が思うようにできていないと、購入の機会そのものが減ってしまいますが、多くのECサイトでは十分に集客できていないのが現状です。SEOやWEB広告、SNSなどからの流入がのび悩むことは珍しくありません。検索エンジンのアルゴリズム変更や広告費の高騰、競合ECサイトの増加によって、以前と同じ施策では新規顧客の獲得が難しくなるケースもあるでしょう。
購入率の低下も、ECサイトの売上が停滞する原因のひとつです。たとえば、サイトの表示速度が遅かったり購入フローが複雑であること、スマートフォン対応が不十分といった問題は、ユーザーの離脱率を高めます。また、ECサイトにおける価格競争が激化しているため、競合ECサイトとの差別化ができていないと、ユーザーは価格で判断して条件のよいECサイトに流れてしまいます。
ECサイトの売上が停滞し、不安や焦りを感じている運用者は多くいます。これまでの努力が報われない失望感も大きいかも知れません。そのような焦燥感のなか、日々の業務に追われていると、ECサイトの問題が何なのか冷静に分析する時間が取れないかもしれません。手あたり次第に施策を打ってしまったり、どのような施策を打てばいいのかわからない状況に陥っている運用者も少なくないでしょう。ECサイトの売上アップにおいて、これをやれば確実に売上アップが達成できるという万能な施策は存在していません。ECサイトの売上アップの施策はひとつだけではなく、複数の施策を組み合わせながら、改善を繰り返すことが重要です。まずアクセス解析や購買データを活用し、実行する施策の優先順位を明確にしていくことが、改善への第一歩となります。
◎ECサイトの課題を発見するための現状分析
ECサイトの状況を変えるためには、まず現状の数値を分析することが必要です。ECサイトの売上構成に重要なのは、集客数、購入率、顧客単価の3つの要素となります。これは、どれかひとつをのばせばいいというものではなく、3つの要素がバランスよく向上することが大切とされています。自社ECサイトの数値を把握するために、アクセス解析ツールを使用しましょう。自社ECサイトの現状の数値を把握し、業界の平均値と比較することで、不足箇所を洗い出すことができます。ECサイトのボトルネックとなっている部分がわかると、施策立案の方向性を決定しやすくなります。
ECサイトの売上アップにおいて、とくに購入率の向上は外せない要素となります。購入率とは、ECサイトを訪れたユーザーが、実際に商品を購入する割合を示す指標です。この数値は、「実際に商品を購入したユーザー数 ÷ ECサイトを訪れたユーザー数」で算出されます。カゴに商品を入れたまま離脱してしまうカゴ落ちが多いと、ECサイトへの訪問者はそれなりにいても購入までいたる人が少なく、購入率が低い状態になります。原因としては、魅力的な画像が少なかったり商品説明が曖昧など、商品ページの情報が十分に提供されていないといった点が考えられます。ほかにも、サイトのデザインが見にくかったり使いにくい、送料が高い、納期が遅いなど、購入までの障壁となる原因があるかもしれません。
競合ECサイトの具体的な数値は外部から見ることができませんが、業界の平均値はツールを活用して調べることができます。また、国内外のマーケティング調査会社のレポートなどで、業界ごとの平均値が公表されている場合もあります。こうしたデータを参考にして、自社ECサイトの数値と業界の平均値を比較しましょう。また、競合ECサイトのレビューを参考に、他社との違いを分析する方法もあります。レビューから、購入者が何に満足し何に不満をもっているか読み解きます。そうするなら、競合ECサイトの強みや弱み、自社ECサイトが改善すべき点などが分かり、施策立案の参考とすることができます。さらに、実際に競合ECサイトで商品を購入するのもひとつの方法です。実際に利用すると、サイトの使いやすさや購入までの導線、決済方法、配送スピード、梱包、同梱物、カスタマーサポートなどを体験することができます。自社ECサイトと比較し、優れている点や劣っている点を具体的に把握できるでしょう。
ECサイトの売上アップに関係するもうひとつの要素となる顧客単価は、ひとりのユーザーが一回の買いもので支払う平均金額のことを指しています。ECサイトの売上は、「顧客数×顧客単価」で表されます。この式からもわかるように、売上アップのためには顧客数を増やすことと顧客単価を上げることのどちらか、または両方に取り組む必要があります。とくに、新規顧客獲得には広告コストなどがかかるため、既存顧客の顧客単価を向上させることは、効率的な売上アップの施策となるのです。顧客単価向上においてクロスセルやアップセルは効果的な施策で、少ない集客でも確実な売上アップが期待できます。
◎ECサイト売上アップのための改善ポイント
ECサイトの売上を改善するためには、複数の施策を組み合わせながら改善を繰り返していくことが重要です。ターゲット層の設定やCXの改善などの施策は、ECサイトの集客数、購入率、顧客単価の不足を改善します。
自社ECサイトの集客数は、Google Analyticsなどの解析ツールを使用して把握することができます。一日のアクセス数が数十件しかないなど、ECサイトへの訪問者数が非常に少ない場合、ECサイトの存在自体がユーザーに知られていない可能性が考えられます。情報を必要としているユーザーに届けるために、ターゲット設定やキーワード設定が曖昧になっていないか確認しましょう。キーワード選定が適切ではないと、検索結果の露出が低下するため、ターゲット層へ情報が届かず集客機会を逃すことになります。万人に向けた商品は、誰にとっても自分ごとになりにくく、結果として誰の心にも響かない情報になってしまうからです。たとえば、30代の女性向けの化粧品を、「自分磨きを頑張るあなたへ」と「すべての人のお肌を美しく」と訴求する場合ではどうでしょうか。前者のほうがより具体的なイメージが湧き、購買意欲につながりやすくなります。このように、ターゲット層に合わせたSEO対策やSNSでの情報発信、リスティング広告、SNS広告などの施策強化は、集客数を向上させるカギとなります。
集客において即効性が期待できるWEB広告は、おもに新規顧客獲得向けの施策です。一方SNSを活用した集客施策は、即効性は低いものの中長期的に売上アップに貢献する施策となります。近年、無料で利用できるInstagramをはじめとしたSNSは、幅広い層のユーザーに利用されており、SNSで商品を検索したのちに購入にいたるユーザーが増えています。そのため、ECサイトの商品情報などをSNSで発信するなら、多くのユーザーと接点をもつことができます。またSNSは、ユーザー同士で共有・拡散されやすいという特徴があります。リプライやコメント機能を活用して既存顧客とのコミュニケーションを図るなら、顧客満足度の向上も期待できます。とくに、トレンドやブランドイメージが重要な、アパレルや雑貨系のECサイトはSNSと相性がいいです。InstagramやTikTokでの写真・動画投稿は、効果的な施策のひとつとなります。インフルエンサーとの連携により、集客につなげる施策も効果的でしょう。LINE公式アカウントを活用した施策も、リピート率を高めます。LINE公式アカウントは、無料ではじめられるうえ、既存顧客とのコミュニケーションツールとして活用できます。キャンペーン告知を配信するなどの施策により、既存顧客のリピート購入につなげられます。
顧客体験(CX)とは、ユーザーがオンライン上で商品やサービスを認知してから、購入後のフォローにいたるまでの、あらゆる接点とそこから生じる感情の総体を指します。ECサイトにおける購入率と顧客体験には非常に強い相関関係があり、顧客体験の質が購入率に大きな影響を与えます。これは、ユーザーがECサイトで商品を購入するまでの過程で感じるストレスや不満が、購入をやめる大きな理由になるためです。ユーザーの不満を見つけるヒントは、アクセス解析ツールを利用した各数値の分析結果やアンケート、カスタマーサポートへの問い合わせ内容などから見つけられます。ECサイトのユーザーがどこで離脱しているか、問い合わせが多い項目はどの部分かなどの分析を定期的に行いましょう。そこから得られたヒントを施策立案の参考にし、改善を地道に繰り返していくことが、CXの向上につながります。
新規顧客の獲得コストが既存顧客の維持コストよりもはるかに高いECビジネスにおいて、顧客ロイヤリティの向上は安定した売上を確保するために不可欠な要素です。顧客ロイヤリティとは、ユーザーが企業やブランドに対して抱く信頼や愛着といった感情的な結びつきを指します。この感情は、単なる満足を超えたものであり、これは顧客単価の向上とも深く関係します。ユーザーにとって好きなブランドの製品であれば、「このブランドなら品質がいい」「後悔しない」という心理が働き、高価格帯の商品を購入する傾向があります。たとえば化粧水が気に入ると、同じブランドの乳液や美容液も購入するといった購買行動につながります。ある商品に満足すると、「このブランドのほかの商品もいいはずだ」と考え、関連商品もまとめて購入するようになるのです。 ECサイトのサービスや商品の価値を信頼したユーザーは、より高機能な上位モデルや特別な付加価値をもつプランへのアップグレードを検討しやすくなります。顧客ロイヤリティの向上は、顧客単価のアップにつながるのです。
◎売上が停滞している今こそ成長のチャンス
ECサイトの売上停滞は、一見すると危機のように感じられるかもしれません。しかし、それをチャンスととらえることは十分に可能です。ECサイトの売上がのび悩んでいるということは、現状のビジネスモデルやマーケティング施策に改善の余地があることを示しているといえます。ECサイトの売上が停滞している今こそ、「ユーザーの行動を深く掘り下げて分析する絶好の機会」ととらえましょう。そうするなら、ECサイトビジネスを次のステージへと押し上げることができます。施策の結果が出るまで、何回も繰り返し挑戦する人だけが物事を成し遂げられます。「必ずこの状況を乗り越えてみせる」という決意は、新しいマーケティング施策を学んだり、まったく違う角度から商品を見直すエネルギーとなるでしょう。
売上停滞期にどう行動するかで、今後のECサイトの未来は大きく変わります。徹底的な分析と施策の改善を行うことで、ECサイトにおいて「なぜ売れているのか」「なぜ売れていないのか」を明確に理解できるようになります。この知見は、一時的な流行に左右されない、再現性のある成功法則を確立する基盤となります。また、ECサイトのユーザーが何を求めているのかを深く知ることで、単に商品を売るだけでなく、ユーザーの生活を豊かにする真の価値を提供できるようになります。ECサイトの売上停滞というピンチをチャンスに変え、ECサイトを次のステージに引き上げたときに味わうポジティブな感情は、何にも変えがたい自信につながるでしょう。
◎まとめ
ECサイトの売上を改善するには、集客数、購入率、顧客単価の現状の数値を把握・分析したうえで、複数の施策を組み合わせながら改善を繰り返すことが重要です。ECサイトと向き合っている運用者は、どうしても主観的な視点に陥りがちです。客観的な視点を取り入れ、主観的な思い込みを排除することで、本当にユーザーが求めているECサイトへと改善していくことができます。ECサイトの売上改善についてご興味のある方は、当社までお気軽にお問い合わせください。
