EC売上アップ術
◎第94回 売上アップにつながる!ECサイトにおけるパーソナライズ導入のポイント
パーソナライズは、ECサイトの売上アップを目指すうえで不可欠な手法ですが、多くのECサイトで有効に活用できていないのが現状です。最適なパーソナライズの導入によって、顧客の興味関心に合わせた提案をするなら、ECサイトの売上アップにつながります。この記事では、ECサイトにおけるパーソナライズ活用の重要性や導入のポイントなどをご紹介します。
◎売上アップにつながるパーソナライズとは
パーソナライズとは、日本語で「個人化」という意味で、顧客1人ひとりの行動履歴や購入履歴などのデータをもとに、最適な商品を提案するマーケティング手法です。おもに、ECサイトにおいて顧客満足度の向上や売上アップを目的として導入されています。ECサイトの購入ページにおすすめ商品を表示したり、購入後のアフターフォローのメールを送信する際などに用います。顧客の行動履歴からパーソナライズされた商品を提案することにより、効果的な売上アップにつなげるのです。
Amazonや楽天など大手のECサイトでは、積極的にパーソナライズが取り入れられていますが、多くのECサイトでパーソナライズが有効活用されていません。その理由として、膨大な顧客データをベストな形で活用するためのシステムの導入やECサイトにおけるパーソナライズ活用の難易度が高いといった背景があります。しかし、正しい知識をもって適切なパーソナライズシステムをECサイトに導入すれば、優れた顧客体験を実現しECサイトの売上アップにつながる可能性が高まります。
ECサイトに取り入れられている同じような手法として、セグメントという言葉があります。セグメントは、ECサイトの顧客の属性、年齢や性別、地域などにカテゴライズし、そのカテゴリーごとに戦略立案を行うマーケティング手法です。これに対しパーソナライズは、顧客の行動データを分析し、閲覧した商品に関連するプロモーションを自動で提供する手法で、似ているようで内容は大きく異なります。パーソナライズは、顧客ひとりひとりにアプローチできるため、ECサイトの売上アップには非常に有効です。しかし、膨大な量のデータを取り扱うという特性から、AIや自動化ツールの活用が不可欠となります。
ECサイトやWeb広告では、売上アップを目的としたパーソナライズが幅広く活用されています。パーソナライズド広告は、ユーザーの投稿履歴や閲覧履歴などにもとづいて、興味関心のある商品を繰り返し表示しています。また、ECサイトや動画サイトのレコメンド機能も、パーソナライズの活用事例として知られています。レコメンドとは、おすすめする・推奨するという意味で、ECサイトの顧客の行動データや嗜好にもとづき、最適な商品やコンテンツを提案する仕組みのことです。ECサイトの入り口となるトップページに、顧客に合わせたおすすめ商品を提案します。新規顧客には人気商品や話題の商品を、既存顧客には購入履歴にもとづいた商品を表示することで、商品を選定する際のストレス緩和につながり、購買意欲を高めます。
ECサイトのカートページには、顧客の購入意思が強く反映されるといわれています。このページには、一緒に購入されている商品や類似商品を表示するのが一般的です。既存顧客の購入履歴からパーソナライズされた提案を表示するなら、関連商品や収益性が高い商品の売上アップが期待できます。また、カートに商品を入れたままサイトを離脱した顧客に購入を促すリマインドメールを送信する際、パーソナライズされた別の商品の提案を含めることもできます。
◎ECサイトにおけるパーソナライズ化の重要性
かつてプロモーションは、新聞広告やテレビ広告など不特定多数の消費者に対して一方的にメッセージを発信し、ブランド認知度を高めるマスマーケティングが主流でした。インターネットが発達した現代においては、Web広告やSNSを活用したデジタルマーケティングや特定の顧客層に特化した、ニッチマーケティングが主流になりつつあります。また、さまざまな情報に容易に触れることができるため、ECサイトを利用する顧客のニーズは、近年多様化の傾向をたどっています。
その一方で、数多くの選択肢から希望に合った商品を選定しなければならないため、顧客にとって大きな労力が必要な作業ともなっています。選択肢がありすぎることで、決断を先のばしにしてしまう現象も生じやすくなっています。こうした状況下で、顧客の興味関心に合わせて商品をダイレクトに提案できるパーソナライズは、ECサイトの顧客獲得において重要な施策といえるでしょう。
パーソナライズされたシステムをECサイトに取り入れるなら、商品選定から購入後のアフターフォローまでの流れを最適化し、顧客のストレスを軽減できます。また顧客が、自分の好みやニーズを理解してくれていると感じやすくなり、ECサイトへの愛着や信頼感につながるため、リピート率の向上や顧客体験の向上にもつながります。ECサイトの新規顧客の獲得には、多大な広告コストがかかります。効率的なECサイトの売上アップの実現には、広告コストのかからない既存顧客の維持が重要です。
さらに、顧客の興味関心のデータをもとにした商品をECサイトに表示させ提案することで、コンバージョン率の向上にも直結します。コンバージョン率とは、ECサイトを訪問した顧客のうちどれくらいの割合が、購入に至ったかという指標です。コンバージョン率が高いほど、パーソナライズが効果的に機能していると評価できます。またパーソナライズは、欲しい商品が明確になっていない顧客にも最適な提案ができるため、ECサイトの新規顧客や潜在顧客の獲得にもつながります。
◎ECサイトにパーソナライズを導入するポイント
ECサイトにおけるパーソナライズを成功させるためには、いくつかの欠かせないポイントがあります。課題や目標を明確にし、継続的に改善を図りつつ導入するなら、ECサイトの売上アップが期待できます。
ECサイトへパーソナライズを導入する際は、まず現状の課題をしっかりと整理することが重要です。GoogleなどのWeb解析ツールを使用すれば、ECサイトのページごとの滞在時間や直帰率、離脱率などから顧客の行動を可視化できます。このようなデータにもとづいて、ECサイトの顧客体験における課題を把握しましょう。それに加えて、顧客にアンケートを実施する方法も、ECサイトの課題の洗い出しに効果的です。さらに、ECサイトへパーソナライズを導入することによりなにを達成したいのか、具体的な目標を設定することも非常に重要なポイントとなります。単に、売上をアップさせたいといったような漠然とした目標ではありません。たとえば、コンバージョン率を3か月後に15%アップさせるといった具体的な数値を設定すると、行うべき施策が明確になり効果的なアクションにつながります。到底達成できないような目標を立てるのではなく、少しハードルが高いくらいの目標を設定しましょう。
ECサイトのパーソナライズに自社商品の状態を反映させることは、顧客体験の向上とECサイトの売上アップの両立において、欠かせないポイントです。たとえば、パーソナライズにECサイトの在庫状況をリアルタイムで反映させるなら、顧客に品切れの商品を勧めてしまうことを防げます。欲しいと思った商品が在庫切れで購入できない状況は、フラストレーションの要因となり、ECサイトからの離脱につながります。また、在庫過多の商品を優先的に表示させたり、「残りわずか」「在庫少」といった訴求を行うことで、顧客の購買意欲を高められます。同じような属性をもつ商品が複数ある場合は、利益性の高い商品を優先的におすすめし、単なる売上アップだけではないECサイトの収益性の向上につなげます。
ECサイトのパーソナライズにおいて、自動化ツールの導入は必須です。導入を検討する前にターゲットを明確にしておくなら、パーソナライズツールの効果的な活用ができます。たとえば、ECサイトの新規顧客や既存顧客、特定のカテゴリーの利用者など、どの層をターゲットにするかによって立案する戦略は異なります。ECサイトの新規顧客をターゲットとする場合は、人気商品や話題の商品をトップページで訴求し、興味を引くことが効果的です。既存顧客やリピーターを重視する場合は、閲覧履歴からのおすすめ商品を表示させたり、カートに放置されている商品のリマインドメールを送信するといった方法で活用できます。
ECサイトの顧客に対して、パーソナライズが偏らないようにすることは、顧客満足度の維持において非常に重要です。ECサイトにおけるパーソナライズが行きすぎると、顧客の新たな発見を阻害してしまう恐れがあります。たとえば、顧客の興味関心に変化があり購入したい商品をECサイトで見つけられなかった場合、ECサイトからの離脱率は高まります。このようなリスクを回避するためには、顧客の行動履歴に関わらず、ある程度トレンド商品や季節商品をパーソナライズに反映させることが重要なポイントです。たとえば、「こんな商品も見られています」「みんなが良く買っている商品」などのメッセージとともに、定期的に新着商品や人気商品を表示させます。このような施策は、顧客に新たな選択肢を提供できるため、大変効果的です。また、意図的に顧客の興味から少し外れた商品を提案する仕組みを導入すると、顧客の偶然の発見につながり、ECサイトでの顧客体験の向上を期待できます。
ECサイトにおけるパーソナライズの効果を客観的に評価するためには、A/Bテストを繰り返し行う必要があります。A/Bテストとは、2つ以上の異なるパターンによってパーソナライズされた商品を顧客にランダムに表示し、どちらがより高い効果をもたらすか検証する手法です。A/Bテストを行わずにパーソナライズを導入すると、その施策が本当にECサイトにとって効果があったのか判断できません。また、ECサイトのPDCAサイクルを繰り返し行うことも、重要なポイントです。PDCAサイクルとは、Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)の4つのステップを繰り返すことで、業務の改善や品質向上を継続的に行う手法となります。このようなプロセスを継続的に実施することで、ECサイトの売上アップが期待できるパーソナライズの実現が可能となります。
ECサイトのパーソナライズは膨大な量のデータを扱うため、手作業による分析は現実的ではなく、AIや自動化ツールの導入が不可欠です。AIを活用した分析ツールは、ECサイトにおける顧客データを効率的かつ高度に解析し、パーソナライズされた最適な提案や体験を自動で提供できます。そのため、業務の効率化や意思決定の質を大きく向上させます。ECサイトに導入するツールを選定する際は、ECサイトにとって必要な機能が実装されているか、既存システムとの親和性は問題ないかといった点を確認しましょう。また、導入後のサポート体制を比較することも、継続的な運用において重要なポイントとなります。ECサイトへの導入後は、一部の顧客を対象にパーソナライズ施策を小さく実施して、リスクを最小限におさえながら効果を検証できます。顧客の立場から見て本当に価値のあるパーソナライズとはなにかという視点で、戦略を立案することが成功のポイントとなります。
◎まとめ
最適な顧客体験を提供するパーソナライズは、ECサイトの売上アップを目指すうえで、欠かせない戦略です。行動履歴や購入履歴を活用して、ECサイトにおける顧客体験を向上させることで、リピート率やコンバージョン率が向上します。現状の課題の整理や目標設定を明確にするなら、最適なパーソナライズができるでしょう。ECサイトの運用やパーソナライズ施策にご興味のある方は、当社までお気軽にお問い合わせください。
