EC売上アップ術
◎第92回 ECサイトの売上アップにつながるCRM導入のポイント
近年、ECサイトビジネスを取り巻く環境の変化により、顧客との関係構築による売上最大化を図るツールとして、CRMに注目が集まっています。しかし、CRMは単に導入すればいいというものではなく、効果を発揮するために欠かせない、いくつかのポイントがあります。この記事では、CRMの概要やECサイトにおける導入のメリット、効果的な活用ポイントについてご紹介します。
◎ECサイトの競争力を高めるCRMとは
CRMは、「Customer Relationship Management」を略した言葉です。日本語に訳すと「顧客関係管理」となります。既存顧客との関係を管理・強化することで、ECサイトを運用する企業と顧客の双方に利益をもたらすマーケティング手法のひとつです。ECサイトにおけるCRM活用の目的には、顧客満足度を向上させることや蓄積データによる営業戦略を構築すること、営業効率の最適化などがあげられます。これまでは、そのためのシステムを「CRMシステム」や「CRMツール」と呼んでいましたが、ITが進むにつれて、そのシステムやツールも含めて「CRM」と呼ばれています。
既存顧客の維持を意味するCRMの概念は古くから存在しており、とくに顧客数が限られていた時代には、営業担当者が顧客管理台帳を用いて個別対応を行うのが主流でした。しかし近年では、ECサイトなどのネットサービスが普及したため、顧客基盤が急速に拡大しています。その結果、膨大な数のECサイトを利用する顧客に対して、従来のようなきめ細かい対応を継続することが現実的ではなくなりました。その一方で、ITやWebマーケティング技術の進化により、ECサイトでもCRMツールを導入・活用し、多くの顧客に対して個別ニーズに応じたきめ細かい対応が可能となっています。
また、顧客ニーズが多様化する現代において、ECサイトにおける顧客の購買履歴や行動データを分析することは顧客を深く理解するうえで大変重要です。それぞれのニーズに応じた最適な商品やサービスを提供するマーケティング手法は、ECサイトの効率的な売上アップに欠かせないものとなっています。このような背景から、データ駆動型のアプローチによる顧客関係の最適化を目指す、CRMが改めて注目されています。CRMは既存顧客を対象とした取り組みであり、新規見込み客をターゲットとするMA(Marketing Automation)とは異なる点が大きな特徴です。顧客の新規獲得も、ECサイト運用において大切なポイントとなります。それぞれの役割を明確に分けつつ、データ分析技術を活用した戦略的な顧客対応をすることが、ECサイトの売上アップにつながります。
◎ECサイトにおけるCRM導入のメリット
ECサイトの運用においてCRMが重要視される傾向が強まっている背景には、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持と管理の重要性に注目が集まってきた点があげられます。とくに、人口減少が懸念される日本において、市場規模の縮小を見据えた事業展開を行う企業が増えています。このような状況では、ECサイトの新規顧客の獲得には、多額の広告コストが必要となります。一方、既存顧客に対しては、そのようなコストがかからないというメリットがあります。ECサイトで同じ売上を達成した場合でも、新規顧客より既存顧客を対象とする方が、収益性が高くなる傾向があるのです。
ECサイトの活用目的に適したCRMツールを導入すると、既存顧客への適切なアプローチが可能となります。CRMツールに蓄積したECサイトの顧客データを分析し、効果的なマーケティング戦略を展開することで、ECサイトの売上アップにつながります。たとえば、商品やECサイトに対する問い合わせ、要望などの情報は、顧客ニーズを把握するうえで大変重要な要素です。蓄積されたそれらのデータを分析するなら、最適な商品提案を行うことが可能となり、さらなるECサイトの売上アップを見込めます。
CRMは、社内のコミュニケーションコストの削減や、属人化の解消による人件費コストの削減につながるという大きなメリットもあります。たとえば、ECサイトの営業担当者が訪問履歴や商談記録などの最新情報を入力すると、その情報を社内で共有できます。そうするなら、急な担当者の変更があったとしても、スムーズかつ的確な顧客対応が可能です。また、ECサイトのCRMツールにさまざまな情報を集約することにより、複数のプラットフォームを利用する必要がなくなります。シンプルかつ効率的なECサイト運用が実現できるのです。
ECサイトでは、メールマガジンなどのコンテンツの配信も行います。CRMを活用し顧客情報に基づいたセグメント設定やターゲティングを行うなら、個別のニーズに合ったコンテンツ配信が可能となります。このような施策は、配信したコンテンツの開封率アップにつながり、ECサイトにおける集客率の向上や問い合わせの増加を期待できます。
◎売上アップにつなげる効果的なCRM活用のポイント
ECサイトにおいてCRMを活用する際に、押さえておくべきいくつかのポイントがあります。ECサイトへのCRMツールの導入により既存顧客の収益率をアップさせるためには、中長期的な視点で施策を設計することが大切です。
CRMツールには、さまざまな機能が備えられています。一般的には、顧客情報や商談記録の管理分析、ステップメールやメールマガジンなどのコンテンツ配信、問い合わせ対応やほかの外部システムとの連携などの機能があります。またシステムには、クラウド型やオンプレミス型があり、それぞれに適性があります。最適なツールを選ぶためには、ECサイトで何を管理し、蓄積された情報をどう活用したいか、どのくらいの規模感を想定しているかなど、目的を明確にしておくことが重要です。CRMを効果的に活用するには、ECサイト運用の目的達成のために必要な機能を備えているツールを選ぶ必要があります。ECサイトでの活用目的があいまいなまま導入してしまうと、CRMツールの効果を感じられないまま煩雑な作業負担だけが残り、結果的に使われないツールとなってしまいます。
また、ECサイトにおける活用目的が明確になっていないと、本来必要のない機能まで導入してしまう場合があります。そのため、コストが高くなったり使用したい機能が足りないなどの不一致が起こり、運用の失敗につながる可能性が高まります。あとから追加できる機能を確認したうえで、はじめは最低限の機能を導入し低コストで運用することは、CRMツールの継続的な運用において重要なポイントです。さらには、ECサイトの既存システムとの親和性を確認しておく必要もあります。既存システムとの親和性が高くないと、不自由なツールとなってしまい、結果活用されないリスクが高まります。まずは、ECサイト運用に関わる各部署の担当者から構成されるプロジェクトチームを立ち上げ、CRMの導入目標について明確化させましょう。
ECサイトの売上アップのためには、CRMシステムに蓄積された顧客管理情報を分析し、最適なマーケティング戦略を展開することが重要です。ECサイトを利用する顧客の管理情報を適切にセグメント分けするなら、顧客のニーズを的確に把握でき、それに基づいた効果的なアプローチの実施が可能となります。そのため、正確かつ最新の情報を入力することが、効果的な運用において大変重要なポイントです。CRMツールへの入力マニュアルを整備するなど、営業担当へのフォローアップ体制を充実させましょう。
ECサイトの売上アップにおいて、定期的なPDCAサイクルの実施は欠かせないポイントです。CRMツールに蓄積された顧客管理情報を基に、マーケティング戦略を見直したり、適切なアクションを起こす必要があります。そのためには、分析業務をルーチン化するなど、ECサイトにおけるPDCAをしっかりと運用できる体制を社内に整えることが重要です。また、他部署との連携も、CRMの効果的な運用において欠かせません。各部署の担当者向けの定例会を開催し、ECサイトのマーケティング戦略の効果についてフィードバックを共有するなら、他部署との連携の強化につながります。こうした取り組みにより得られた分析結果を基に、新しい商品やサービスの開発、さらにはキャンペーンの企画などを行い、ECサイトの売上アップにつなげます。
CRMツールは、導入しただけで即座に効果が現れるものではありません。蓄積されたデータを分析し効果的に活用するためには、継続的なECサイト運用を想定する必要があります。導入直後は、既存システムからの切り替えや新たな入力業務などが発生し、従業員の業務負担が一時的に増えることが予想されます。そのため、導入の意義や目的について社内で十分な理解を得ないまま進めてしまうと、業務負担ばかりが増し、導入のメリットを実感できないという事態に陥りやすくなります。
このような状況では、従業員の協力を得るのが難しく、結果として効果が出る前に運用を断念してしまうケースも少なくありません。そのような事態を避けるために、運用中に発生する疑問やトラブルに対して迅速に対応できるサポート体制が整っているかを、導入前に確認しておくことが重要です。また、ECサイトにおけるCRM導入の意義や具体的な活用方法について、中長期的な視点から社内で定期的に共有し続け、効率的かつ継続的な運用を実現できるようにしましょう。
CRM導入後も、ECサイトへの不正アクセスや顧客情報の漏洩といったリスクは常に存在します。万が一顧客情報が漏洩すれば、その信頼を回復するには多大な時間とコストを要します。ECサイトを利用する顧客との信頼関係を損なわないためにも、導入時にはセキュリティ対策やアフターサポートの充実度をしっかりと確認しておく必要があります。ECサイトにCRMの導入を検討する際は、ベンダーの過去の実績や評価、保守契約やサポート契約の内容についての十分なチェックも大切です。
◎まとめ
マーケティング戦略におけるCRMの活用は、ECサイトの売上アップに欠かせない要素のひとつです。ECサイトの既存顧客に対して的確なアプローチを行うなら、効率的かつ持続的な売上アップが期待できます。そのためには、中長期的な視点で明確な目標を設定し、その目標を達成できるツールを適切に選定し導入する必要があります。ECサイトの運用やCRM活用などにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
