EC売上アップ術
◎第79回 ECサイトにおけるOMOの導入メリットとポイント
ECサイトにOMOを積極的に取り入れたいと考えている運用担当者は近年増加しています。ECサイトが過密状態の今、オムニチャネルやO2Oなど、ユーザーを取り込む手法や運用スタイルは実に多岐に渡ります。この記事では、ECサイト運用におけるOMO導入のメリットやポイントをご紹介します。
◎ECサイトにおけるOMOとは
OMOとは「Online Merges with Offline」の略称で、オフラインとオンラインのサービスを区別することなく融合させるという意味を持ち、顧客体験(CX)の強化を目指すマーケティング手法です。似たような用語でO2Oというものがありますが、O2Oはオンラインとオフラインをはっきりと区別をする運用方法です。同じブランドであってもECサイトはECサイト、実店舗は実店舗と完全に分けたサービス状態での提供になります。O2OではECサイトと実店舗との間に架け橋なつながりはありません。ユーザーとの接点を持つ方法として活用されているオムニチャネルは、チャットやLINE、コールセンターなど、さまざまなチャネルを一元化して、ECサイトの販促機会やユーザーとの接点を増やす方法になります。
実店舗とECサイトを全く別物としている企業や、さまざまなチャネルを設けて販売経路を拡充させているECサイトもあります。どの手法にもそれぞれのメリットデメリットがありECサイト運用にとって一概にどの戦略が正解である訳ではありません。OMOは、ECサイト運用側からの注目度もさることながら、とくに実店舗側から非常に注目度が高い運用方法です。OMOは顧客満足度の最大化が目的の手法なので、ECサイト、実店舗ともに利益を伸ばす大きな一手となります。
BtoCビジネスにおいて顧客満足度の最大化は、常に意識するものであり、改善に努めることが求められる重要な課題です。さまざまな分野でデジタル化が進む今、あらためて自社のビジネスモデルやスキームを整理し、どのセグメントでデジタル化を進めるのかアナログなシステムを維持するのかを考え直すことにより、同じ商品を同じECサイトで販売していてもユーザーに与える経験や満足度は全く異なる印象となります。
ECサイトの化粧品の販売でいうと、カラーバリエーションをスクエアカットに画像を表示させるのか、カメラ機能を利用しユーザーが直接そのカラーでメイクをしているところをECサイト内で再現できるのかで顧客体験の満足度や商品への期待度には大きな差が付きます。このように、ECサイトならではのユーザーのリアルな体験に溶け込めるようなOMO化を推進し、より豊かな顧客体験を生み出すことが、ECサイトの売上アップにつながります。
◎ECサイトにOMOを取り入れるメリット
ECサイト運用にオフライン運用を取り入れてOMO化する最大のメリットは、買い物体験をユーザーが行い、売上に直結する点にあります。つまり販売の機会損失を最小限に抑えられるということです。ECサイトの弱みともいえる感触や匂い、味、着心地、サイズ感等を実店舗で確認することにより解消できます。ユーザー視点で捉えると、成功体験となり、LTVの最大化が期待できます。
たとえば、アパレルのECサイトを運用しているのであれば、ECサイトで販売している商品を実店舗で試着できるようにし、商品を気に入ったユーザーがECサイトでまとめて注文するなど、より満足度の高い顧客体験につながります。実店舗側から見ても、遠方から来店していて荷物が重くなるから買えないなどの事情のユーザーを逃さずに済みます。このように、ECサイト運用における弱みを補完してくれる働きがあるのがOMOという手法ですが、実店舗運用にまで広げず、OMOを取り入れる手法もあります。
家具や家電であれば、クリックした商品をリアルサイズで部屋のなかで視認できるOMOがあります。OMOは商品に限った手法ではなく、モバイルペイメント等の決済方法もOMOに含まれます。実店舗とECサイトの両方を運用している場合、支払い方法としてモバイルペイメントを導入することにより、顧客情報等そのユーザーの購入傾向や頻度、単価等の分析に役立ちます。オンラインとオフラインの垣根をいかに低くすることができるかが、今後のECサイト運用のポイントといえるでしょう。
OMOでは、ユーザーが実店舗に出向かなくても、家具のレイアウトがされた状態を、ECサイト内で確認できます。ECサイトで購入する際は、オンライン決済でストレスフリーな支払いが店舗で行えます。今すぐ購入できない事情があっても、帰宅すればすぐにECサイトで購入できるなど、ユーザーの事情に合わせたサービスの導線を意識することで、機会損失を最小限にとどめることができます。OMO化したECサイト運用で機会損失の最小化とLTVの最大化をもたらし、ECサイトの一歩先を行く運用体制が整います。
◎ECサイトにおけるOMO導入の具体例
OMO導入はECサイト、実店舗ともにさまざまなパターンがあります。自社のECサイト運用や実店舗の運用にとってどのような事例がフィットするのか、分析と見極めをしてから導入することが売上アップにつながるポイントです。
デジタルサイネージは、アパレルショップに出向いた際やコスメショップに出向いた際に、実際に試着やテスターを使用しなくても、ディスプレイを見るだけで欲しい洋服や化粧品を身に付けた自身の姿を映し出すことができるシステムです。試着の手間をデジタルで解消する、最先端のデジタルサイネージを活用します。アプリケーションをインストールすることにより購入希望のコスメで化粧をした自身の顔を確認できるサービス等もあり、まさにオンラインとオフラインの融合を実現させた顧客満足度の高いエフォートレスなECサイト向けのシステムといえるでしょう。
街中でよく目にする動画広告もデジタルサイネージにあたります。実店舗のサービスやイベントの宣伝のために3D広告を人口密度の高い場所に掲示するなど、PR方法のOMO化はさまざまな方向に展開されています。デジタルサイネージの広告を利用してECサイトのPRをすることは、企業の知名度を高めることにもつながります。
今や決済方法として定番化しつつあるモバイルペイメントですが、顧客情報の収集に効果が高いとされます。PayPayや楽天Payなどのバーコード決済は、顧客情報の宝庫ともいえます。モノより情報の価値が高いとされる昨今、ECサイトの運用においてもモバイルペイメントを導入することはユーザーの情報をより深く収集できる大きなチャンスを生み出します。
モバイルペイメントの導入はOMOの成功に欠かせない要素であると、OMO提唱者も述べています。モバイルペイメントの多くは、ポイントがたまり支払いに利用できるサービスが搭載されています。そのポイントはECサイトだけではなく、実店舗の支払いやクレジットカード請求の一部に充てるなど、さまざまな活用方法があります。シェア率の高いモバイルペイメントを決済方法として導入することにより売上アップに貢献します。
◎OMO導入でECサイトが成功するポイント
OMOを成功させる重要なポイントとしてマルチチャネル化があげられます。顧客接点をひとつに絞るのではなく自社のECサイトでのバナー広告やSNS、動画サービスでの広告や購入者への販促物等、顧客接点を多く持つことがポイントです。問い合わせ窓口としてもチャットやLINEなどユーザーとの接点を多く持つことにより、どのチャネルからの流入がどの商品の売上につながるのか、チャネル別の決済方法の割合等詳細な分析を定期的に行うことができます。
ユーザーが商品購入の際に重視するアフターサポートの種類や充実度にもマルチチャネル化が関わってきます。いくら口コミが良く、手元に届いた商品がイメージ通りであっても、何かトラブルが起きたり商品の使用方法に疑問を抱いたりした際に問い合わせできるチャネルはあるのか、アフターサポートはどれぐらい充実しているかをユーザーは厳しい目でチェックしています。OMOでもアフターサポートの重要度の比率は変わりません。チャットボット化したことにより的を射た回答を得ることができない、LINEで問い合わせても回答が遅いなど、マルチチャネル化をしてもサポート体制が充実していないと成功させることはできません。最先端のデジタル技術を利用しつつも、顧客対応の基本を維持することが、OMOを成功させるポイントです。
OMOで大切なのがICTの活用です。マルチチャネル化されたすべての販売経路、流入経路等を把握・分析するための顧客管理や営業支援ツールの活用が欠かせません。やみくもに最新技術を投入してOMO化を推進させるのではなく、導入前の設計や業務整理がOMOを成功させるための第一歩です。自社での人材確保が難しい場合は専門家に依頼をし、自社のECサイト運用に適したサービスや人材を依頼する方法もあります。
実店舗運用においては、サービス品質の高い顧客体験ができるような店舗の導線づくりや広告を挟んだレイアウト等が必須となってきます。実際にその場で購入に至らなくても、その店舗に行って良い体験ができたとユーザーに印象付けることにより、その後のECサイトでの購入につながります。OMOを意識した店舗運用やECサイト運用は、ユーザーの成功体験を最大化することが ポイントとなります。成功に欠かせないシステムは、モバイルペイメントの導入です。高度な技術を要した販促や購入体験ができても決済がスムーズにいかないと、ECサイト自体のイメージもちぐはぐな印象になってしまいます。顧客体験とスムーズな決済、適材適所の人材と技術、この3つの要素を意識することが大切です。
◎まとめ
デジタルサイネージからモバイルペイメントまで、私たちの生活に密着しているシステムをいかに使いこなすかが、ECサイトにおけるOMO導入のポイントとなります。ECサイトと実店舗の運用スタイルであれば、オンラインとオフラインの導線を整えましょう。よりリアルに近い顧客体験で、売上アップにつなげましょう。