TEL
MAIL

EC売上アップ術

◎第75回 ECサイトの複数モール出店で売上アップを狙うポイント

ECサイト運営の売上アップの戦略として、複数モールへの出店で販路を拡大しようと考える事業者は多いのではないでしょうか。複数モール出店が成功すれば、さらなる自社ブランドの知名度の向上や売上アップにつながります。この記事では、複数モールに出店する際のメリットや注意点についてご紹介します。
 

◎ECサイト運営における複数モール出店

ECサイト運営での複数モール出店とは、一般的に、同一ブランドや同一店舗で複数のECサイトに出店することを意味します。Yahoo!ショッピングやAmazon、楽天市場などの大手ECサイトへ出店し、出店先ECサイトの特色を活かして売上アップや安定化につなげる運営方法です。複数モールへの出店は、顧客へアプローチするチャンスが増える分、管理工数も増加する傾向にあります。
 
売上アップのためには自社のECサイトでの販売戦略とは別のアプローチや分析が必要となります。管理工数は増加するものの、複数モールへの出店は、各ECサイト内で自社ブランドや販売商品の新規顧客を獲得する起点になります。各ECサイトで獲得した新規顧客は、将来的に新商品を展開する際の大きな強みにもなり得るのです。多数のECサイトがあり販売チャネルも多様な現在では、複数モールへの展開はECサイト運営の安定化と売上アップにおいて欠かせない要素といえます。
 
ECサイト運営における複数モール出店

◎ECサイトを複数モールに出店する最大のメリット

複数モールに自社ブランドや商品を展開する最大のメリットは、自社のECサイトと出店先の大手ECサイトが競合として対立する必要がなくなることです。たとえば、知名度が高くポイントアップサービスや決済サービスが充実しているAmazonや楽天市場から、自社運営のECサイトに顧客を流入させることは困難といえます。
 
しかし、大手ECサイトに複数の自社ブランドや商品を展開すると、競合他社だった大手ECサイトのシステムや集客力が、自社ブランドや展開商品の売上アップにつながる強力なツールへと変化します。同一カテゴリーの他社製品を閲覧している顧客に、類似商品として自社商品が同一ページ内にピックアップされることもあるでしょう。これまで自社のECサイトでは接点がなかった顧客の目に触れることにより、自社ブランドや商品の知名度が向上し、売上アップが期待できます。
 
ECサイトを複数モールに出店する最大のメリット

◎複数モール出店におけるECサイトの運営ポイント

ただやみくもにECサイトを複数モール展開するだけで、安定運営と売上アップにつながるとは限りません。適切なコスト管理や業務フローの整理、出店先のECサイトの特色やニーズを分析することが、複数モールに出店をするうえでの大きなポイントです。
 
〇出店先のECサイトの特色を理解・活用する
複数モール出店ではじめに必要な工程は、それぞれのECサイトの客層やニーズの違いを理解することです。自社ブランドや商品の販路拡大にどのように活用できるのか、慎重に分析をすることが必要になってきます。そもそも取扱商品の市場が、そのECサイトに展開する余地があるのか見分けることも重要です。やみくもに複数モールに出店するのではなく、複数モールに一括で同じ商品をそのまま出品するのか、ECサイトごとに展開する商品の早期購入特典やノベルティを変更するのかなど細かい調整も検討しましょう。広告の内容や商品の詳細説明など、商品展開の戦略を再構築する必要性が生じることもあります。各ECサイトのサービス内容やポイントプランによって、顧客ニーズのプライオリティは大きく異なります。
 
たとえば、配送の速さを求めている顧客が多いECサイトにはいつでも配送可能な商品の在庫を多く確保することが必要です。また、安さやポイント活用でのお得感を求めている顧客が多いECサイトには、割引率が高い商品をECサイト内のキャンペーンに合わせて出品するために在庫調整を行う必要が出てきます。このように、ECサイトの特色を理解して活用することが、複数モール出店における売上アップのカギとなります。
 
チャンスロスの減少を念頭に置いた在庫管理の徹底により、顧客のニーズを満たす体制が整えば、大きな売上アップを目指すことが可能です。また、大手のECサイトには必ずといっていいほど、定期的な大規模セールやポイントアップキャンペーンがあります。各ECサイトのポイントアップキャンペーンや大規模セールを活用して、年間スケジュールを立てましょう。プランニングしたサイクルに基づいた在庫管理・広告費やセール時期の見直しを行うことで、複数モール出店での商品の回転率を安定させて売上アップにつなげられます。とくに、季節やイベントに影響を受けやすい商品を取り扱っている場合は、各ECサイトでのPR不足や連携漏れなどが起こらないように、複数モール出店にフィットするような業務フローの見直しを検討しましょう。
 
〇複数モール出店特有のコストを洗い出す
自社のECサイト運営や、ひとつのECサイトに1ブランドを出店する場合と比較して、複数モールに出店するケースは在庫や売上管理のコストが増加します。複数モールに出店する際のコストをどの程度許容できるのか、どこまで管理コストをカットすることができるのかが売上アップや安定運営に実現する大きなカギです。
 
「ひとつのECサイトに必要な管理工数×出店したECサイト店舗数」ではなく、包括的な管理が可能な業務体制やツールを整える必要があります。長期的な運営コストを抑えることが複数モールへの出店によるメリットの最大化につながります。管理を平準化してランニングコストを抑制することが、複数モール出店における売上アップの第一歩です。
 
また、出店する際の契約コースが複数準備されているECサイトの場合、出店する際のコースの吟味はもちろんの、契約コースの見直しも定期的に検討する必要があります。ひとつのECサイトへの出店プランを比較した場合、金額が大きい契約コースのほうが充実したサービス内容であることはもちろんです。しかし、ひとつのECサイト内だけでのプランやコストの比較をするのではなく、それぞれのECサイトでの売上げ点数や金額を定期的に追っていき、コストに見合った出店料やサービスであるのかを慎重に考慮する必要があります。売上規模によってはサービス過剰なプランである可能性もおおいにあるのです。
 
〇一極集中をせず適切なリスク分散
ECサイトの複数モール運営に欠かせない考え方がリスク分散です。出店しているECサイトが検索上位に表示されなくなる、システムトラブルやメンテナンスでECサイトが長時間のアクセス不可となるなどの思わぬトラブルを避けるために、複数モールに出店する際はひとつのECサイトに商品展開数やキャンペーン、広告費を寄せすぎないことが大切です。複数モール出店という特色を生かし、ひとつのECサイトでの売上が見込めなくなっても、ほかのECサイトの売上で補完できるようなリスク分散をする展開方法を検討する必要があります。コストカットとリスク分散の両輪が安定運営と売上アップが期待できます。
 
また、複数モールへの出店で考慮をしなければならないリスクのひとつに、ヒューマンエラーの増加があります。ECサイトごとに運営方法や管理方法、配送や精算の期限やタイミングが異なります。同じ数の商品を扱っていても、自社のECサイトで商品展開をしている状態と、複数モールのECサイトに商品展開をしている状態では、管理工数に差が出てきます。出店するECサイトを決める際、業務フローの最適化や人材の適正配置など、ハード面の最適化とともにソフト面の見直しを行うことが最短距離での売上アップにつながります。
 
複数モール展開により売上がアップしても、配送遅延や期待したサービスを提供できない事態になると、顧客の信頼を失うことになりかねません。そのため、事業の拡大により新規採用やアウトソーシングがやむを得ないケースも出てきます。その場合にはイニシャルコストの回収にかかる期間も想定し、人件費を算出してください。顧客満足度に影響しないコストカットと適正なリスク分散ができる仕組みを構築しましょう。
 
〇各モールの売れ筋商品の分析と顧客へのアプローチ
購入までの導線や離脱のタイミング、どのような紹介文や画像だとクリックされやすいのかなど、同一商品で、ECサイトの特色を比較分析する必要があります。ECサイトによって顧客のニーズが違えば、同じ商品を出品していても閲覧数や売上げ点数や消化スピードに差が出てくることは当然といえます。あるECサイトでは販売点数が芳しくない商品でも、別のECサイトでは販売点数や消化ペースが好調というのは、複数モールに出店する際によくある事象です。こまめな在庫調整を行い、チャンスロスを減少させることが重要になります。売上点数が好調なECサイトのアプローチを強化する、伸び悩んでいるECサイトへの出品商品数を調整するなど、短いスパンでの販売戦略の切り替えが、複数モール運営の売上アップのポイントです。
 
ECサイトごとの競合他社の売れ筋商品なども分析し、各ECサイトの顧客の特色にマッチするアプローチができるよう、定期的な分析と検証を行いましょう。購入者限定やヘビーユーザーに的を絞ったセット販売や割引プランの提供など、展開先のECサイトの顧客満足度を高めるアプローチ方法で商品展開をすることも、自社ブランドや商品の売上アップにつながります。
 
複数モール出店においては、平均客単価や商品購入層の分析を行い、適切なタイミングで販売商品の切り替えや割引キャンペーン、新商品や限定商品の展開を行うことが重要です。注意点としては、顧客へのアプローチ方法が増える分、顧客から自社のECサイト窓口やモール経由で顧客側からコンタクトをする機会が増加する点です。メールやSNSへの問い合わせ、クレーム対応など、ECサイトやチャネルでの顧客対応フローを構築することが大切です。短期的な要因分析とECサイトごとの顧客解析や顧客対応コストの検討を十分に行いましょう。
 
複数モール出店におけるECサイトの運営ポイント

◎まとめ

ECサイトの複数モール出店はリスク分散となり、顧客にアプローチできる切り口も増えます。それぞれのECサイトへ出店する前に、業務フロー整理と適切な人員配置などのソフト面の見直しを行いましょう。ECサイトの顧客傾向やサービス内容と特色を分析し、複数モール運営のメリットを最大化活かして売上アップにつなげましょう。
◎第75回 ECサイトの複数モール出店で売上アップを狙うポイント