EC売上アップ術
◎第73回 ECサイトの売上アップにつながるリサーチ分析のポイント
ECサイトは、自社運営や大手プラットフォームへの出店など、さまざまな運営方法があります。いずれのプラットフォームでも、ECサイト運営をするにあたり必要なことはリサーチです。リサーチの種類を理解して最適なサイクルで分析をすることにより、リピーターの確保や新規顧客を逃さないECサイト運営ができます。この記事では、ECサイトの売上アップにつながるリサーチポイントをご紹介します。
目次
◎ECサイト運営におけるリサーチの重要性
商材のターゲットやペルソナ、競合他社をリサーチしないまま、概要や効果・価格やキャンペーンの訴求に注力したECサイト運営をしてしまうと、コストに見合った利益を得ることが難しくなってしまうため、ECサイトの売上アップを目指すならリサーチは非常に重要といえます。リサーチが不十分なままECサイト運営を継続すると、商材のアピールポイントや魅力的な割引キャンペーンが想定しているターゲット層にうまく届かないため、売上アップにつなげることが難しくなります。ターゲット層をそもそも大きく見誤っている事態も起こりえるのです。
ターゲット層やペルソナを見誤ったECサイト運営は、的外れな流入経路を想定した訴求をしてしまうなど、商材PRやキャンペーンの失敗要因になる恐れがあります。売上減少や信頼性の低下といった大きな損失につながる可能性さえ出てくるのです。ECサイトの売上アップのためには、商材PRを大々的に開始するタイミングや、新規商材をECサイトで取り扱う際には、とくにリサーチを徹底することが重要です。
ECサイトで商材を購入する動機は顧客によって違います。どのようなニーズや悩みを持った顧客に求められている商材なのか、どのような時期やきっかけで、より多く検索される商材なのかをまずは知る必要があります。リサーチを重ねて顧客のニーズやペルソナを知ることにより、はじめて的確なターゲット層に絞ったECサイト運営ができます。セグメンテーションに沿ったリサーチと丁寧な分析を続けることによって、ECサイト内で取り扱っているほかの商材とのPR比率をリバランスするきっかけを掴めるなど、結果としてコストカットにもつながります。
リサーチを重ねることにより、より費用対効果の高いキャンペーンの展開をスタートさせ、コストに見合った利益を得るための起点とすることができます。プラスして、リサーチの結果によっては、現在のECサイト運営の思わぬ改善点を把握して、ECサイト自体のブラッシュアップにもなります。一方でリサーチを怠ってしまうと、ECサイト運営にとって重要なUIの改善や、サービスのクオリティに対する顧客の要望や意見、日々変化する消費のトレンドなどの大きな流れに気付くことができません。その結果、競合他社のECサイトに顧客が流出してしまい、チャンスロスや売上減少という結果を招きかねないのです。
◎ECサイトの売上アップにつながるリサーチの基本
まずは、リサーチの目的をはっきりさせることが大切です。ECサイトへの流入経路の改善、コストカット、トレンドの把握による売上アップなど、何を目的にリサーチをするかによって、リサーチのワードや使用するツールが異なります。取り扱っている商材がモノではなく体験型商材の場合、商材を楽しみたいという能動的な動機なのか、必要に迫られて購入に踏み切る主体性の低い動機なのかをリサーチする必要があります。顧客のペルソナにより、マーケティング戦略は大きく変わってきます。リサーチの比重をどこに置く必要があるのか、目的と同時にある程度明確にしておく必要があります。
次に、リサーチするうえでは避けられない競合他社の定義を明確にしておく必要があります。同じジャンルの商材を扱っているECサイトが競合なのか、購入層のペルソナが似ているECサイトが競合なのか分析し、競合他社のベンチマークを明確にしましょう。体験型商材の場合、競合がECサイトではなく実店舗である可能性も含めてリサーチをする必要があります。顧客のニーズによって、検索ワードやそのECサイトをクリックするか否かの判断基準が異なります。定義や目的の明確化によって、リサーチで得られる自社の課題やECサイトの売上に大きな差が出てきます。
◎ECサイト運営に欠かせないリサーチの種類
ECサイトの売上アップにつながるリサーチ方法にはいくつかの種類があります。ECサイトで取り扱っている商材や目的別で使い分けることが重要です。
〇顧客リサーチ
顧客リサーチとは、顧客のニーズやペルソナ、運営しているECサイトのメインとなるターゲット層を割り出すリサーチです。直接顧客の声を聞けるWebアンケートやインタビュー、類似商品を販売している競合ECサイトの商品レビューを確認する方法などがあります。とくに、運営しているECサイトに新規商品を展開する際やセール時期を設定する際に抑えておきたいリサーチです。
〇競合リサーチ
競合リサーチとは、競合他社のECサイトのサービス内容や顧客のターゲット層を分析するためのリサーチです。実際に競合他社のECサイトから商材を購入し、サービス提供の流れと商材のクオリティやアフターサービスなどを把握します。自社の商材やサービス提供の流れとの差異を認識し、ECサイト運営の改善点や自社の提供する商材の強みを見つけ出せます。
〇商材リサーチ
商材リサーチとは、商材自体が市場に占める割合や人口動態から予測される、商材が持つ将来性を把握するためのリサーチです。安定的に需要があり売上の変動が少ない商材なのか、短期的な需要の高まりや下落が激しい商材なのかを、運営しているECサイトへの商材リリース前にリサーチをします。安定的に需要がある商材であればその商材のPRコストを抑え、別の商材のPRに予算を付け替えるなど、長いスパンでのコストカットにつなげられるリサーチです。ECサイト運営におけるマーケティング戦略や予算の分配を左右する、重要なリサーチ項目になります。
◎ECサイト運営を成功に導くリサーチのポイント
商材の販売時に1度リサーチをすれば終わりではなく、適切なサイクルやメソッドでリサーチをし続ける必要があります。ECサイトの売上アップや安定運営に必須であるリサーチのポイントを押さえておきましょう。
〇時間軸に沿った定期的なリサーチ
時間軸に沿った定期的なリサーチとは、あらかじめデータドリブンのPDCAサイクルを決めておく方法です。毎朝・毎週・毎月など特定の日にちや曜日、時間に定点観測的なリサーチを行います。定点観測をすることにより、予期せぬアクシデントやチャンスを予測できます。さまざまな観点から予測したうえでECサイト運営をするためのPDCAサイクルを構築することが大切です。
〇KPIを基準にしたリサーチ
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を基準にしたリサーチとは、商材の売上が伸長したタイミング、低迷したタイミングなど判断基準となるKPIをあらかじめ設定しておくリサーチ方法です。購入のタイミングや同時購入されている商材や購入点数、前年度の売上比率などをリサーチすることにより、効果的な商材PRのタイミング設定や、コストカットにつなげることができます。また、運営しているECサイトへの流入が平均を大きく上回ったり、逆に下回ったりしたタイミングでのリサーチも効果的です。数字が動いた瞬間のリサーチを行うことにより、顧客の動向を早い段階で拾い上げ、ECサイト運営の改善点を把握できます。蓄積された購入データをグラフ化し、視認性を高めた状態で分析するとより傾向が掴みやすいでしょう。
〇SNSリサーチ
SNSリサーチとは、XやFacebook、Instagramなど各SNSでハッシュタグ+商材キーワードでリサーチをする方法です。思い通りに商材キーワードでヒットしない場合は、単語や文章など切り口を変えて、数種類のワードでリサーチをする必要があります。常日頃ECサイトで扱っている商材の略称や通称の種類、サジェストワードの推移を把握しておきましょう。SNSは、更新頻度がブログや口コミサイトよりも高いため、投稿するユーザー同様習慣的にリサーチをすると情報をキャッチアップする効果が高まります。SNSユーザーや競合他社のECサイト顧客が、どのようなタイミングでどのようなワードを使い発信をするのか知ることも大切です。
自社のECサイトの顧客や、関連ワードで発信しているSNSユーザーの過去の投稿を把握できるため、生活のどのようなシーンで商材を活用しているのかなど、よりペルソナに密着したリアルなレビューをリサーチできます。思わぬ利用方法でポジティブな投稿を見つけた場合、ECサイト内の商材PR方法を大きく変えるきっかけにもなります。SNSリサーチは、商材購入のきっかけや感想だけではなく、顧客の生活スタイルや消費動向、交友関係などを網羅的に知り、潜在ニーズや潜在顧客を把握しましょう。
◎まとめ
リサーチの定義を決めて、的を絞り細分化することにより、精度の高い分析ができます。差別化や追従、潜在顧客の発掘など目的はさまざまですが、基礎となるリサーチ力を高めることがECサイト運営を安定的に行ううえで大切なことです。データドリブンのためのリサーチを徹底することで、ECサイトの売上アップにつなげましょう。