EC売上アップ術
◎第67回 ECサイトの売上アップにつながる回遊性を向上させる施策とは?
ECサイトの売上を伸ばすうえで注目すべき指標のひとつが「回遊性」です。ユーザーにとって魅力的なECサイトであるかを測る基準のひとつでもあります。しかし、EC事業以外の分野ではあまり馴染みのない指標のため、その重要性や改善方法を理解していない運営者も多いでしょう。この記事では、ECサイトにおいて回遊性が重要な理由と、回遊性を向上させる施策をご紹介します。
目次
◎ECサイトにおいて回遊性が重要な理由
回遊性とは、ユーザーがECサイト内のページをどのくらい閲覧したかを表す指標のことです。「ページビュー数(閲覧数)÷セッション数(訪問者数)」という計算式で求められ、ECサイトを訪問したユーザーが多くのページを閲覧するほど回遊性は高くなります。
ECサイトにおいて回遊性が重要な理由は、回遊性の向上が購買率アップにつながるからです。回遊性が高いということは、ユーザーとの接点が増えることを意味します。実店舗においては、顧客に店内をじっくりと見てもらい、適切な接客をすることで最終的に商品を購入してもらえます。これと同じようにECサイトにおいても、ページを閲覧してもらい、ユーザーの疑問や悩みを解消するコンテンツを提供することで購買率アップが期待できるのです。回遊性の高さはECサイトの顧客単価にも影響します。回遊性が高いと、ユーザーに多くの商品を見てもらえます。これによりユーザーの購買意欲を刺激し、本来購入予定のなかった商品の「衝動買い」や「ついで買い」を促す効果があるのです。顧客単価の増加は、ECサイトの売上アップに大きく貢献します。
多くのページを閲覧してもらうことで、ECサイトのファン獲得も期待できます。「情報量が豊富で信頼できる」「魅力的な商品を豊富に取り扱っている」と判断してもらえるからです。ユーザーにポジティブな印象を与えることで、リピーターになってもらえる確率が高くなります。ユーザーがたまたま訪れた1ページだけでECサイトの強みや商品ラインナップを伝えることはできません。回遊性を高めてECサイトの魅力を理解してもらうことが大切です。
加えて、ECサイトの滞在時間が延びることで、SEOにもプラスの効果があります。検索結果の上位に表示されることでユーザーがECサイトにたどり着きやすくなり、売上アップが期待できます。
◎ECサイトの回遊性を高める施策
ECサイトの回遊性を高めることで、購買率増加やファン獲得などの効果が得られるため、売上アップが期待できます。
○ユーザーの導線設計
ECサイトの回遊性を高めるには、ユーザーの導線設計が重要です。ページを閲覧したユーザーが次に求めている情報を推測し、スムーズにアクションを起こせるように導線を設計しましょう。まずは、内部リンクを充実させる必要があります。ページを読み進めているユーザーはその内容に興味を持っている状態です。そのため、関連記事の内部リンクを設置することで、別のページも閲覧してもらえる確率が高くなります。ユーザーは、さまざまな情報を収集することで商品への興味が増し、結果的にECサイトの売上アップにつながります。
カテゴリ分けやタグの活用も効果的です。回遊性を高めるには、ECサイト内で欲しい商品をスムーズに見つけられるようにしておかなければなりません。ECサイトでどれだけ魅力的な商品を取り扱っていても、ユーザーが目的の商品を見つけられなければ離脱してしまうからです。各商品を適切にカテゴリ分けすることで利便性が向上し、ユーザーが快適にECサイトを回遊できるようになります。タグを活用すれば、より細かなニーズに合った商品を見つけやすくなります。ただし、ユーザーがECサイト内を回遊するうちに、どの階層にいるのかわからなくなることもあるので注意が必要です。グローバルナビゲーションを設置して、ユーザーが目的の情報に迷わずたどり着けるようにしておきましょう。
○質の高いコンテンツの提供
コンテンツの質は回遊性に大きく影響します。ユーザーは求めている情報を得られないコンテンツだと判断すると、すぐにECサイトを離脱してしまうからです。逆に商品の細部まで丁寧に紹介した質の高いコンテンツであれば、ほかのページにも興味を持ってもらえます。そのため、ECサイトの回遊性を高めて売上をアップさせるには、高品質なコンテンツを提供することが大切です。
高品質なコンテンツを作成するには、ユーザーの検索意図を把握しましょう。ユーザーが何かを検索するとき、何らかの疑問や不安を解消しようとしています。たとえば、キーワードが「洗剤 敏感肌」の場合、「敏感肌の人でも肌荒れしにくい洗剤を知ること」が検索意図です。この場合、商品ページに「刺激の原因となる◯◯成分不使用」「肌テスト済み」など、敏感肌の人でも安心して使用できるポイントを細かく説明すると、ECサイトや商品に好印象を持ち、ほかのページも閲覧してもらえる可能性が高くなります。競合サイトや関連キーワードなどを参考に、ユーザーに寄り添ったコンテンツを作成し、ECサイトの売上アップを目指しましょう。
○トップページを作り込む
一般的に、トップページはECサイトのなかで最も閲覧数の多いページです。ユーザーがトップページを訪問した際、興味を引く情報を提供できればECサイトの滞在時間は長くなります。トップページを作り込むことは、ECサイトの回遊性を高めるうえで有効です。具体的には、キャンペーンやクーポンなど、ユーザーにとって有益な情報を提供すると良いでしょう。お得感をアピールすることでECサイト内の回遊を促し、売上アップが期待できます。
ECサイトの特徴や強みを一目で理解してもらい、商品に興味を持ってもらうことも大切です。どのようなECサイトなのかわからなければ、そのECサイトを選ぶ必要がなく、すぐに離脱してしまうからです。たとえば、オーガニック食材を取り扱うECサイトであれば、「人にも自然にもやさしい暮らし」のようなキャッチフレーズとともに、コンセプトをわかりやすく表現した画像をトップページに表示すると効果的です。ECサイトの魅力を伝えることで競合サイトと差別化でき、回遊性が高まります。人気商品ランキングや新商品の紹介もおすすめです。ただし、多くの情報を詰め込みすぎるとかえって使いにくくなってしまうので、情報に優先順位をつけて適切に配置しましょう。
○おすすめ商品や関連商品の表示
回遊性を向上させるには、おすすめ商品や関連商品を表示させてユーザーの興味を引くのも効果的です。たとえば、電化製品の商品ページでは、アタッチメントなどのアクセサリや上位モデル商品を提案しましょう。商品ページを閲覧しているユーザーは、その商品に興味を持っている状態なので、おすすめ商品や関連商品も合わせて閲覧する可能性が高いです。ユーザーがわざわざECサイト内を検索せずとも1クリックで商品の比較・検討ができるため、利便性も向上します。またアップセルやクロスセルにより、顧客単価を増加させる効果もあります。
一般的に、ユーザーは商品を買い物カゴのなかに入れたタイミングがいちばん購買意欲の高い状態です。そのため商品ページだけではなく、買い物カゴページにもおすすめ商品や関連商品を表示させると回遊性が高まり、売上アップが期待できます。レコメンドツールを導入すれば、ユーザの閲覧履歴や購入履歴を基に最適な商品を表示できるので活用しましょう。
○オウンドメディアとの連携
最近ではオウンドメディアと連携したECサイトへの注目が集まっています。オウンドメディアで有益な情報を発信し、ECサイトの商品ページへ誘導することで回遊性を高められます。たとえば、化粧品を取り扱うECサイトの場合、メイクアップ術やメイク道具のお手入れ方法などをオウンドメディアで紹介し、商品ページへ誘導すると良いでしょう。オウンドメディアと連携することで商品ページ以外にもユーザーとの接点が生まれるため、回遊性だけではなく集客力も高まり、潜在顧客やファン獲得も期待できます。新たにオウンドメディアを立ち上げるのが難しい場合は、スタッフブログで情報を発信するのも有効です。
オウンドメディアのコンテンツを作成する際は、ターゲットを明確に設定することが重要です。ターゲット設定があいまいだと、軸がぶれて訴求力が低下してしまいます。ECサイトや商品のコンセプトとの乖離がないように注意が必要です。ただし、ECサイトとオウンドメディアを連携させてもすぐに効果が現れるわけではありません。コンテンツがSEOで評価されてユーザーの目に留まるようになるまでには3ヶ月〜半年程度はかかるので、長期的な視点で運営しましょう。
◎ECサイトの回遊性を改善する際の注意点
回遊性はECサイトの売上アップに関わる重要な指標ではありますが、単純に数値が高ければ良いというわけではありません。ユーザーが必要な情報を見つけられず、不必要にページ遷移をくり返している場合もあるからです。既に商品の購買意欲が高いユーザの場合、あえてほかのページを回遊させず、ダイレクトに購入ページまでたどり着けるようにすることで、売上アップが期待できます。回遊性の高さだけをやみくもに追い求めても効果はありません。各コンテンツの位置付けや行動履歴・滞在時間などを総合的に分析し、ユーザーがスムーズにアクションを起こせるようにECサイトを設計することが大切です。
コンテンツの情報量を増やすために画像や動画などを充実させると、ページの表示速度が遅くなり、ユーザーが離脱する要因になります。ファイル容量の圧縮や遅延読み込みなどの対策を行い、ユーザーの利便性を損なわないように注意しましょう。
◎まとめ
ECサイトの回遊性を高めることで購買率や顧客単価が増加し、売上アップが期待できます。回遊性を高めるにはECサイトの導線設計を行い、ユーザーにとって有益な情報を提供することが重要です。オウンドメディアと連携させればより集客力や回遊性が向上し、ユーザー獲得にもつながります。適切な施策をとることでECサイトの回遊性を高め、売上アップを目指しましょう。