EC売上アップ術
◎第62回 ECサイトの商品数は増やすべき?売上アップで注目すべき数値を解説
ECサイトの商品数を増やすと売上が伸びるのではと考える人は多いのではないでしょうか。確かに商品数が多いと購入される可能性は高くなりますが、かえって不利になることもあります。売上を伸ばすには単純に商品数を増やすのではなく、自社のECサイトに合った戦略を立てることが大切です。この記事では、商品数が多い場合と少ない場合のそれぞれで売上をアップさせるポイントと、商品数以外に注目すべき数値について解説します。
目次
◎ECサイトにおいて商品数が多いメリット
ECサイトの商品数が多いメリットは、ユーザーのニーズへ応えやすくなることです。近年、ユーザーのニーズは多様化しています。ECサイトで幅広い商品を取り扱うことで、さまざまなニーズにマッチする確率が高まります。ユーザーは、商品を選ぶ楽しみを感じることで購買意欲が刺激され、複数の商品を比較検討できるので満足度も向上します。
商品数が多いことで、検索エンジンからの流入増加も見込めます。多くの商品ページが検索エンジンにインデックスされるため、ユーザーがECサイトを訪問する入り口が増えるからです。もし訪問してもらえなくても、検索結果に表示されることでECサイトの認知度が上がるため、また別の機会に商品を購入してもらえる可能性があります。検索結果の上位は大手ECサイトの商品が独占していることも多いですが、ニッチな商品を取り扱うことで上位表示も狙えます。
さらに、ECサイトの商品数が多いとアップセル・クロスセルも期待できます。アップセルとは、より高価格な商品を購入してもらうことです。クロスセルは、関連商品を一緒に購入してもらうことを指します。商品数が多ければ、ユーザーへのおすすめ商品として上位モデル商品や関連商品などを提案できるのです。まとめ買いやついで買いによって購入単価が上がれば、売上もアップするでしょう。ECサイトで「○円以上で送料無料」としている場合、条件を達成しやすくなるので商品を購入するハードルを下げる効果もあります。
◎ECサイトの商品数を増やすデメリット
商品数が多いことはメリットばかりではありません。商品数が増えると、その分仕入れや製造などのコストも大きくなります。ECサイトで販売するには商品登録をしなければなりませんが、商品写真の撮影や説明文の作成などの作業が必要なため人件費もかかります。商品数が増えると大量の在庫を抱えることになります。大量の商品の売れ行きを予測して仕入れるのは手間がかかり、在庫管理が煩雑になります。商品の誤発送はECサイトの信頼性の低下につながるので注意しなければなりません。在庫を保管するための広いスペースも必要です。
商品数を増やすことで、ECサイトの特徴を出しづらくなります。たとえば「大きいサイズ専門店」「オーガニック商品専門店」のような、そこでしか買えない商品があるECサイトはリピーターを獲得しやすいでしょう。しかし、どのようなユーザーのニーズにも応えようとしてあらゆる商品を取り扱うと、ECサイトの個性がなくなってしまいます。個性がないECサイトは、ユーザーから選ばれる可能性が低くなるのです。
◎ECサイトで商品数を増やすときのポイント
ただやみくもにECサイトの商品数を増やせば売上がアップするとは限りません。売上を伸ばすには、ポイントを抑えて商品数を増やす必要があります。
○関連商品から充実させる
商品数を増やす際は、商品を購入するユーザーが何に関心を持っているのかを考えて、関連商品を充実させることが大切です。たとえば、コスメを取り扱うECサイトなら、関連商品としてメイク落としやスキンケア用品などがあげられます。ユーザーの関心がある商品は、まとめて購入してもらえる可能性が高いです。逆にアウトドア用品などのコスメとはまったく関係のない商品を扱っても、ユーザーが興味を持つ確率は低いでしょう。それどころか取り扱い商品に一貫性がないECサイトという印象を与え、信頼性が低下する可能性もあります。
○コストを考慮する
商品を増やすと仕入れ・製造・商品登録・在庫管理などのコストがかかります。コストがかかりすぎるとECサイトの売上アップにつながらないどころか、赤字になるリスクもあるのです。それを防ぐためにも、あらかじめECサイトでの販売計画や必要経費から予算を組む必要があります。資金や人手を確保できるかを考慮し、戦略的に商品数を増やすことが大切です。
○低品質な商品ページを量産しない
商品説明の作成には手間がかかるためコピペして作成するなど、似たような商品ページが多くなりがちです。しかし定型文だけで構成された低品質な商品ページを量産しても、ユーザーに商品の機能や特徴は伝わりません。検索エンジンはユーザーにとって有益なページを優先的に表示するため、低品質な商品ページはペナルティを受けるリスクもあるのです。ペナルティを受けると検索結果の表示順位が下がり、最悪の場合には検索結果に表示すらされなくなります。手間がかかっても、ユーザーが買いたいと思う魅力的な商品ページを丁寧に作りましょう。
○ユーザーが商品を見つけやすくする
商品数が多いことでユーザーが目当ての商品にたどり着けなくなってしまっては元も子もありません。ECサイトでユーザーが商品を見つけやすいように工夫しましょう。たとえば、商品をカテゴリごとに分かりやすく分類する方法が有効です。ECサイトでアパレルを扱う場合、「トップス」というカテゴリだけでなく「Tシャツ」「ブラウス」「パーカー」など、細かく分類すると欲しい商品を見つけやすくなります。
また、商品ページに適切なキーワードを設定することも欠かせません。トップスひとつとっても、サイズ・色・デザイン・素材・機能などさまざまです。商品を探しているユーザーがどのようなキーワードで検索するかを推測し、検索でヒットするような言葉を選びましょう。
◎商品数が少ないECサイトで売上を伸ばすポイント
商品数が多いとECサイトの売上は伸びやすくなりますが、必ずしも商品数を増やさなければ売上がアップしないわけではありません。実際、ひとつの商品に特化して売上を伸ばしているECサイトもあります。商品数が少なくてもECサイトの売上を伸ばすポイントをいくつか紹介します。
○入口商品に力を入れる
商品数の少ないECサイトでは、入口商品に力を入れて顧客獲得を目指しましょう。入口商品とは、ユーザーがECサイトで購入するきっかけとなる商品のことです。たとえば、価格が安い・送料無料など、購入するハードルを下げることでユーザーとの接点を持つことが目的です。
ただし、安ければ商品は何でもいいわけではありません。なぜなら入口商品をきっかけにECサイトのリピーターになってもらう必要があるからです。次もこのECサイトで購入したいと思ってもらえる商品を選びましょう。少量をお得に試せるお試しセットや、ECサイトの強みをアピールできる商品がおすすめです。
○コンテンツの作成
商品ページだけではなく、ブログやコラムなどのコンテンツもECサイト訪問のきっかけとなります。そのため、コンテンツを充実させて商品ページにうまく誘導できれば売上アップにつながります。少数の商品を取り扱う専門性を活かして、ユーザーの悩みや疑問を解消できるコンテンツを作成しましょう。ただし、商品紹介を前面に出すと押し付けがましい印象を与えるため、ユーザー目線で有益なコンテンツの作成を意識することが重要です。
○SNSの活用
商品を購入してもらうには、まずECサイトや商品を認知してもらう必要があります。認知度を高めるにはSNSの活用が有効です。ただし、Twitter・Instagram・Facebookなど、世代によって利用しているSNSは異なります。ECサイトや商品のターゲット層に合わせたSNSを選択しましょう。また、インフルエンサーにSNS上で商品を紹介してもらうのも効果的です。
◎ECサイトの売上アップに重要な数値は「数」だけではない
ECサイトにおいて商品数は売上を伸ばすための要素のひとつでしかありません。売上アップを目指すなら「数」だけではなく「率」にも注目しましょう。ECサイトにおいて重要な「率」は、主に購入率・直帰率・回遊率・リピート率・入会率などです。そのなかでもECサイトの売上に直結するのは購入率だといえます。購入率とは、ECサイトを訪問した人のうち実際に商品を購入する人の割合です。一般的にECサイトの購入率は1〜3%ほどといわれています。購入率が高いほど売上も高くなるので重要な数値です。
購入率を高めるには、まずユーザーが商品をスムーズに購入できるようにしましょう。ECサイトで購入するまでには、商品を探す・会員登録・個人情報の入力・決済方法の選択など、さまざまな手順があります。これらの手続きが複雑だとユーザーが途中で離脱する原因になるのです。離脱を防ぐには、会員登録を不要にする・他サービスのアカウントとデータを連携するなど、円滑に手続きを進められるようにすることが大切です。
また、ターゲットを明確に絞り込むのも効果的です。ECサイトで商品を購入してもらうには、ユーザーから「この商品が欲しい」と思ってもらう必要があります。ただし、多くの人に興味を持ってもらうために万人受けする商品を取り扱うと、かえって購入率が悪くなる可能性もあります。なぜなら万人受けする商品は、言い換えると特筆すべき特徴がない商品であり、どのターゲットにも刺さりにくいからです。そうした商品はどのECサイトでも購入できます。自社のECサイトを選んでもらうには、ターゲットを絞り込んだ個性的な商品を取り揃える必要があります。
◎まとめ
ECサイトの商品数が多いことはメリットにもデメリットにもなり得ます。単純に商品数を増やすのではなく、コストや在庫を考慮することが大切です。商品数が少ない場合は入口商品やコンテンツの作成に力を入れて、認知度を高めるのが効果的です。また、ECサイトの売上を伸ばすには商品数だけではなく、購入率などの数値も重要になります。自社のECサイトでどのような戦略をとるべきか検討し、売上アップを目指しましょう。