EC売上アップ術
◎第115回 ECサイトの売上アップにつながるカスタマージャーニーの成功ポイント
カスタマージャーニーは、現代のマーケティング戦略には不可欠な手法です。ECサイトの運用に活用すれば、ユーザーの離脱ポイントやECサイトの課題を客観的に可視化できます。 改善すべきポイントが明確になることで、購入率向上や売上アップにつながる施策を検討しやすくなるでしょう。この記事では、ECサイトにおけるカスタマージャーニーの重要性から、構築のステップ、導入成功のためのポイントまで詳しくご紹介します。
◎ECサイトにおいてカスタマージャーニーが重要な理由
カスタマージャーニー(Customer Journey)は、直訳すると「顧客の旅」を意味します。ただし、観光旅行のような意味ではなく、ユーザーがECサイトの商品やサービスを知り、興味を持ち、購入を検討し、最終的にファンになるまでの一連のプロセスを、ひとつの旅に見立てたマーケティングの概念です。カスタマージャーニーがECサイトの売上アップに重要とされる理由は、ユーザーの心の動きに寄り添った施策を考えやすくなるためです。ユーザーは商品を探す際、まず商品の存在を知り、興味を持ち、比較・検討を行いながら、購入するかどうかを判断しています。
こうした購入までのプロセスにおけるユーザー心理を想像することで、ECサイト上でどのような不安や悩みを感じているのかを把握しやすくなります。たとえば、サイズ感に悩むユーザーにはサイズ表を、使用感が気になるユーザーには口コミやレビューを提示するなど、必要としている情報を適切なタイミングで届けやすくなります。その結果、ユーザーはECサイトに対して安心感や信頼感を持ちやすくなり、継続的な購入やファン化にもつながっていくでしょう。
ユーザーの心の動きを旅にたとえて眺めてみると、意外な落とし穴が見つかることがあります。ECサイトにおける旅の終着地は購入です。カートに商品を入れるところまでは進んでいるにもかかわらず、その段階でECサイトから離脱している場合は、購入につながる導線に課題があるかもしれません。また、カートに商品を入れる前に離脱している場合は、ECサイトが購入先の候補として十分に選ばれていない可能性があります。たとえば、商品の説明が長すぎて必要な情報が伝わりにくくなっていたり、選択肢が多く、どれを選べばよいかわからなくなっていたりするケースです。
このように、ユーザーがECサイトから離脱する要因を整理し、ひとつずつ改善していくことが重要です。ユーザーの迷いや不安を減らしていくことで、購入率の向上やECサイト全体の売上アップにもつながりやすくなります。ECサイトの売上は、1度きりの購入だけでなく、継続的に利用してくれるファンを増やすことで安定しやすくなります。そのため、商品購入後のフォローまで含めてカスタマージャーニーを考えることも大切です。まずは、自分がユーザーだった場合、どのようにこのECサイトに出会い、どのような気持ちで購入に進むのかを想像してみることが、カスタマージャーニー設計の第一歩になるでしょう。

◎ ECサイトでカスタマージャーニーを構築する流れ
ECサイトでカスタマージャーニーを構築するには、いくつかのステップがあります。まずは、ECサイトの商品やサービスをどのような人に購入してほしいのかを明確にするため、ペルソナ設定を行います。ペルソナ設定ができたら、次にそのペルソナがECサイトの商品を知り、興味を持ち、購入を決断するまでの心の動きをフェーズごとに書き出していきます。この整理に活用されるのが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーがECサイトに出会い、購入に至るまでの流れを旅路にたとえて整理した地図のようなものです。一般的には、横軸に時間や行動の流れ、縦軸にユーザーの行動や感情をまとめた表形式で作成されます。このマップを作成することで、ECサイトへアクセスしたユーザーが「ここで不安を感じている」「ここで期待感が高まっている」といった感情の変化を可視化しやすくなります。ユーザーの心の動きが見えることで、どのタイミングで情報が不足しているのか、どこで離脱につながっているのかを把握しやすくなります。
カスタマージャーニーマップを整理できたら、次はECサイトにおける課題を洗い出します。その際のポイントは、実際にユーザーの立場になってECサイトを操作してみることです。購入までの流れがスムーズか、必要な情報が適切なタイミングで表示されているかを確認することで、改善すべきポイントが見えやすくなります。たとえば、ユーザーが悩みや不安を感じる場面で、それを解消する情報が不足しているケースも少なくありません。サイズ表や口コミ、送料、納期など、購入判断に必要な情報が不足していることで離脱につながっている可能性もあります。ECサイトの課題を整理し、現状を把握できたら、まずは小さな改善から進めていくことが大切です。フェーズごとに施策を整理し、優先順位をつけながら改善を積み重ねていくことで、購入率や売上アップにつながりやすくなります。

◎ECサイトでカスタマージャーニーを活用する成功ポイント
ECサイトでカスタマージャーニーを活用するには、カスタマージャーニーマップの作成が欠かせません。その際は、ペルソナを具体的に設定すること、現実に沿った内容で設計すること、課題をひとつずつ改善していくことが大切です。
カスタマージャーニーマップを作成する際、ペルソナ設定はマップ全体の精度を左右する重要な要素です。そこでよくある失敗が、ECサイトのターゲット層を平均化してしまうことです。たとえば「30代・都内勤務・独身女性」のように、多くの人に当てはまる人物像だけでは、ユーザーの行動や感情までは見えてきません。重要なのは、実際に存在していそうなひとりの人物像まで具体的に落とし込むことです。同じ30代女性でも、少しでも安く買いたい人と、できるだけ早く届けてほしい人では、ECサイト内で注目するポイントや行動が大きく異なります。カスタマージャーニーマップを作成するうえで本当に重要なのは、その人がどのような状況で、何を解決したくてECサイトを訪れているのかという背景です。年収や家族構成などの情報は、あくまで人物像を補足するための要素に過ぎません。ユーザーがどのような状況で、どのような悩みや目的を持ってECサイトに訪れるのか。このシーンが明確になることで、カスタマージャーニーマップに描くべき行動や感情も見えやすくなります。
現状とかけ離れたカスタマージャーニーマップにならないようにすることも重要です。自社の理想をもとにマップを作成してしまうと、本来見るべき課題が隠れてしまう可能性があります。とくに、自社の商品やサービスに強い思い入れがあるほど、魅力は十分に伝わっているはずだと無意識に考えてしまいがちです。しかし、実際のユーザーが同じように感じているとは限りません。そのため、カスタマージャーニーマップを作成する際は、自分たちに都合のよい解釈が入っていないかを常に意識することが大切です。また、マップを現実的な内容にするためには、ユーザーは思い通りには動かないという前提を持つことも重要になります。理想の購入ルートを描くのではなく、ユーザーがECサイトのどこで迷い、どこで離脱しているのかという現実を丁寧に整理することが、実際に活用できるカスタマージャーニーマップにつながります。
カスタマージャーニーマップを作成すると、改善すべき課題が複数見つかることがあります。しかし、すべてを1度に改善しようとすると、リソース不足によって中途半端に終わってしまう可能性があります。ECサイト改善で重要なのは、どの施策を実施した結果、どのように数字が変化したのかという因果関係を把握することです。たとえば、10個の改善を同時に実施してしまうと、売上が伸びた場合でも、どの施策が効果的だったのか、逆にどの施策がマイナスだったのかを判断しづらくなります。そうなると、次に何を改善すべきかが見えなくなり、感覚的な運用になってしまう恐れもあります。成果が見えないまま改善を続けることは、担当者のモチベーション低下にもつながりかねません。そうならないためにも、まずは最優先で改善すべき離脱ポイントをひとつ決め、小さな改善を積み重ねながら進めていくことが大切です。

◎ECサイトでカスタマージャーニーを活用し続けるコツ
カスタマージャーニーマップは、1度作成するとこれが正解だと思い込み、固定化してしまうことがあります。しかし、ECサイトの売上を継続的に伸ばしていくためには、カスタマージャーニーマップを完成品として扱わず、常に変化する仮説として捉えることが重要です。ユーザーの価値観やライフスタイルは、社会情勢や競合ECサイトの登場によって、想像以上のスピードで変化していきます。以前は、PCでECサイトを閲覧し、時間をかけて比較検討したうえで購入する流れが主流でしたが、現在ではインフルエンサーのライブ配信を見ながら、スマートフォンで直感的に購入を決めるケースも増えています。
このように、ユーザー行動は時代とともに変化していきます。その変化にあわせて、定期的にカスタマージャーニーマップを書き換えていくことが、ユーザーとの接点を強化し、ECサイトの継続的な売上アップにつなげるポイントになります。継続的に活用していくためには、実際の購入データや離脱率などを定期的に確認し、自分たちが想定していたユーザー行動と現実の動きにズレが生じていないかを検証することが大切です。そのうえで、必要に応じてカスタマージャーニーマップを更新する運用サイクルを作ることで、より実態にあった改善施策を行いやすくなります。
ECサイトにカスタマージャーニーを活用する本来の目的は、完成度の高い地図を作ることではありません。変化し続けるユーザーの心に寄り添いながら、検証と改善を積み重ねていくことが、長く選ばれ続けるECサイトづくりにつながっていきます。

◎まとめ
ECサイトの売上アップを実現するには、カスタマージャーニーを通じてユーザーの心の動きを深く理解することが不可欠です。具体的なペルソナを設定し、理想ではなく現実の行動にもとづいたマップを作成することで、離脱ポイントや情報の不足が明確になります。1度作って満足せず、データの検証と改善を繰り返しながら、変化し続けるユーザーの価値観に寄り添い続けることこそが、選ばれ続けるECサイトを作るカギとなります。