EC売上アップ術
◎第110回 ECサイトの売上アップに欠かせない!ロジスティクスの最適化
近年、配送コストや人件費の高騰、顧客ニーズの多様化により、ECサイト運用者の負担は増大しています。そのような状況のなか、ロジスティクスを最適化することは、ECサイトの売上アップにおいて極めて重要な要素となっています。この記事では、ECサイトにおけるロジスティクスの重要性から最適化するポイント、導入のステップまでご紹介します。
◎ECサイトにおけるロジスティクスの重要性
ロジスティクスとは、元々は軍事用語の兵站(へいたん)に由来する用語です。兵站とは軍事作戦の支援のために、物資や人員を供給、輸送、管理する活動全般を指します。ECサイトにおけるロジスティクスとは、単に配送というひとつの作業を指すのではなく、ユーザーがECサイトの商品を注文してから、手元に届くまでの、すべての流れを管理することです。単にECサイトの商品を運ぶだけではなく、それをいかにスムーズに、安く、間違いなく行うかが、ECサイトにおける売上アップのカギとなります。ECサイトにおけるロジスティクスが最適化されていなければ、せっかくマーケティングで集客し、良い商品を作っても、最後の物流の段階でコストとユーザー両方を失いかねません。
ECサイトにおける優れたロジスティクスは、顧客体験を向上させ、リピート購入や口コミによる新規顧客獲得につながります。ユーザーは、ECサイトで注文してから商品が届くまでの時間が短いほど、満足する傾向があります。とくに当日配送や翌日配送などのスピード配送は、ECサイトでの購入の決め手になることがあります。最適化されたロジスティクスは、ECサイトにおける無駄なコストの削減にも貢献します。倉庫管理、在庫管理、梱包、配送ルートの最適化を行うことで、物流にかかるコストを削減できます。そうして削減したコストを、ECサイトの新規顧客獲得のためのプロモーションや、新規商品やサービスの開発に当てれば、ECサイトの売上アップの可能性は高まります。
ECサイトにおけるロジスティクスの最適化は、競争力の強化にもつながります。ECサイトで注文してから到着するまでが速いと「また、ここで買いたい」と感じるユーザーは多いため、リピーターにつながります。また、誤出荷や破損がなくなることによりクレームが減り、ユーザーのECサイトへの信頼感が増すとともに担当者の負担軽減にもなります。このように、ECサイトにおけるロジスティクスは、ユーザーに見えない部分のコストを下げると同時に、見える部分の質を高めるという、利益と売上の両方を向上させるものといえます。

◎ECサイトにおけるロジスティクスを最適化するポイント
ECサイトにおけるロジスティクスを最適化させるには、配送コストを見直すこと、在庫と倉庫管理の非効率性を解消することは極めて重要です。また配送時の多様なニーズに対応すること、リバースロジスティクスの効率化はECサイトの売上アップにおいて欠かせないポイントです。
近年、配送料の高騰や梱包資材の増加、人件費の上昇などにより、ECサイトのロジスティクスにおける運営者の負担は増加しています。だからといって送料無料をやめてユーザー負担になると、送料が高いという理由でカートから離脱する原因になってしまいます。その対策としてもっとも効果が出やすいのが、ECサイトの物流業務全体を外部化し、プロのノウハウを活用することです。まずは、自社のECサイトが契約している配送業者の契約内容の見直しや梱包資材とサイズの適性化を図ることがコストカットの第一歩ではありますが、そもそも人員が足りていなければ思うようには進まないかも知れません。サードパーティ・ロジスティクスと言われる物流業務全般を請け負ってくれる外部業者へ委託すれば、自社で倉庫や人員を抱える固定費負担がなく、出荷量に応じた変動費としてコスト管理ができます。多くの業者は複数のユーザーの荷物をまとめて運送するため、法人契約価格が適用され、自社で契約するよりも安価になることが多いです。見積もりは無料もしくは安価で取ることができ、見積もりの段階でECサイトの課題を発見できる場合もあります。まずは見積もりを取ってみると新たな扉が開くかも知れません。
ECサイトのロジスティクス適正化において、在庫と倉庫管理は、コストとスピードに直結する部分であり、非効率性の温床となりやすい部分でもあります。たとえば、ECサイトで需要予測が正確に行われていなければ、売れない商品の在庫が多くなり、売れる商品が欠品しがちな状態になります。それでは売れない商品の保管に無駄なスペースとコストをかけ続けることになります。また、売れ筋商品の欠品によりユーザーを逃すだけでなく、顧客満足度の低下を招き、リピート購入が減ってしまいます。そういった事態を避けるには、担当者の過去の勘や経験に頼った、なんとなくといった発注ではなく、AIやデータ分析を活用した需要予測システムのデータにもとづいた発注が必要です。また、売れ筋商品が倉庫の奥や高い位置など、もっとも遠い場所に配置されている状態では、スタッフがムダに長い距離を歩かなければならず、人件費が膨らむ要因となります。さらに、在庫管理や検品などを手書きの伝票やExcelに依存している状態では、人的な入力ミスによる誤配送や在庫数間違いが発生しやすくなります。これは、倉庫内の物の動きと在庫をリアルタイムで管理するシステムの導入により解消できます。
ECサイトで購入された商品を配送する際、ユーザーのさまざまなニーズに柔軟に対応することはECサイトの売上アップにおいて重要なポイントです。大手ECサイトでは、注文時に玄関前や宅配ボックス、ガスメーターボックスなど、具体的な置き場所をユーザー自身が指定できる機能を提供することによりロジスティクスの最適化を図っています。ユーザーは在宅の必要がなくなり利便性が向上し、配送業者側も再配達が大幅に削減され効率が向上します。コンビニエンスストア受け取りは、帰宅時間が遅いユーザーや、自宅での受け取りを避けたい場合に有効です。主要なコンビニエンスストアチェーンと提携し、ECサイトで注文時に受け取りたい店舗を指定し、そこに商品が到着すると、店舗の専用端末でバーコードを発行して受け取る仕組みが一般的です。自社でシステムを組む必要はなく、外部サービスを利用することで実現できます。また、ゆっくり配送という選択肢もあります。ECサイトで購入後、発送まで5営業日以内を選んだユーザーに、次回使える割引クーポンをプレゼントすることで次回の購入をうながします。ECサイト側はある程度まとめて発送作業ができ、担当者の負担軽減につながります。
商品を配送した後のロジスティクスは、一般的にリバースロジスティクスと呼ばれます。これはECサイトの顧客満足度の維持・向上、コスト削減の観点から重要なポイントです。リバースロジスティクスは、商品がユーザーの手元からECサイト側に戻ってくるすべてのプロセスを指しますが、ECサイトにおける顧客満足度維持のためには、返品や返金処理の効率化に注力することは重要なポイントです。なかでも、ユーザーがECサイトで安心して購入できるよう、返品に関するルールを明確にすることはもっとも重要です。たとえば、返品可能な期間や返品不可の条件をECサイトの商品ページやFAQにわかりやすく記載すると信頼感が高まります。ほかにも、返品専用のオンラインフォームの設置や、返品専用のメールアドレスやLINEアカウントを用意し、連絡手段を絞ることでユーザーも事業者も混乱を防げます。基本的にユーザー都合の返品は元払い、不良品など事業者都合は着払いなど、ルールを明確にし、不公平感をなくすことはECサイトへの信頼感につながります。加えて、返品された商品が倉庫に戻ってきたらすぐに検品することも重要です。ユーザーへの返金をスムーズにし、商品を再販可能な物とそうでない物に分けることで、次の販売機会を逃さないようにでき、不良在庫を減らせます。

◎効率的なロジスティクス最適化のステップ
ロジスティクスの最適化は、ECサイトの現状の課題把握からはじめると効率的です。しかし、ECサイトにおけるロジスティクスの課題が「なんとなくコストがかかっている」「忙しくてどこから手をつければいいかわからない」といった漠然とした状態であることは少なくありません。そのような状況では、まずは、ロジスティクスの見える化からはじめると効率的に進められます。たとえば、1件あたりの平均配送料、配送業者別の比率やピッキング、梱包、検品に費やした時間と人件費などを測定すれば、具体的な数字が見えて来ます。それから倉庫内でスタッフがどこをどれだけ移動しているかを簡易的に書き出し、現場の動きを図にすれば、視覚的に課題を把握することができ社内で共通の認識をもつことができます。
たとえば作業開始から完了までの時間をストップウォッチで計測したとします。そこで1件あたりの平均ピッキング時間が18分かかっており目標の10分を大きく超過していたと判明すれば、倉庫内のロケーション配置の非効率、またはピッキング方式の選択ミスがボトルネックとなっている可能性が見えて来ます。無駄な移動時間が発生するような、商品の置き方になっていないか、ECサイトで取り扱う商品の種類や出荷量に合っていない非効率なピッキング方法を採用していないか、現状の動きを視覚的とらえることにより改善につながります。
しかしながら、自社でゼロから分析することは、時間と労力がかかり非効率になりがちです。そこで専門家の力を借りることで、一時的に費用はかかりますが、短期間で優先順位の高い改善点を知ることができます。これはロジスティクスにおいて短期間で客観的な評価を得るのにもっとも効率的といえるでしょう。

◎まとめ
ロジスティクスを見直すことは、ECサイトの売上アップにつながる大切なポイントです。配送コストや在庫管理の無駄を減らすことはもちろん、配送時のさまざまなニーズに対応し、返品対応もスムーズにすることで、売上アップに直結します。現状の課題を見つけるためには、ロジスティクスの「見える化」が欠かせません。まずは現状を整理し、できるところから見直して、売上アップにつなげていきましょう。