EC売上アップ術

◎第105回 売上アップへの近道!ECサイトでPDCAサイクルを回す成功ポイント

ECサイトの売上アップにおいて、PDCAサイクルは強力なツールです。しかしながら具体的に実行するとなると、どこから始めたらいいのかわからないといったECサイトの運用者は少なくありません。PDCAサイクルはポイントを押さえて実行することでECサイトの継続的な売上アップの可能性を高めます。この記事では、ECサイトの売上アップにおいてPDCAサイクルを回す重要性からメリット、成功ポイントまでご紹介します。

 

◎ECサイトの売上アップに欠かせないPDCAサイクル

PDCAサイクルはECサイトの売上アップを実現するための重要な基盤となります。Plan計画、Do実行、Check評価、Action改善のそれぞれの頭文字をとってPDCAと呼ばれており、そのサイクルを繰り返すことで、業務やプロセスを段階的に改善し、より高い目標を目指すものです。

従来PDCAサイクルは、主に製造業における品質管理や生産管理の分野で多く使われていましたが、現在では業種や職種を問わず、経営管理、営業、マーケティング、人事・人材マネジメント、さらには個人の自己啓発など、幅広いビジネスシーンや活動で活用されています。変化の速いECサイトの市場環境でも集客数や購入率など、ECサイトの売上アップに関わる数値をPDCAサイクルにより最適化させたり、顧客対応などの施策を常に評価しながら改善させたりすることで、効率的に売上アップにつなげられるとされています。

PDCAサイクルの最初の段階であるPlan計画は、現状分析、目標設定、戦略立案の部分にあたりますが、これらはその後のDo実行、Check評価、Action改善のすべての行動の基準になります。そのため、PDCAサイクルを実施するために設定する目標値は「なんとなく」といった漠然としたものではなく、ECサイトに蓄積されたデータを分析し、導き出した数値を設定することが極めて重要です。また、ECサイトにおいてPDCAの施策を実行する際は、その過程を詳細に記録に残し、ユーザー視点での改善を繰り返すことで、ECサイトの売上アップのための成功確率を高めることができます。PDCAサイクルは、螺旋状にレベルアップしていくことが理想です。 達成できなかった項目は次のPDCAサイクルで目標を再設定し、達成できた項目はさらに高い目標を設定することにより、ECサイトの成長の勢いを維持できます。

ECサイトの売上アップに欠かせないPDCAサイクル

◎ECサイトでPDCAサイクルを実施するメリット

ECサイトにおいてPDCAサイクルを実施することで、売上アップのために実行すべき施策の優先順位が明確になります。このことは、無駄な施策や労力を省き、最短距離で目標達成を目指すことにつながります。さらに、ECサイトにおけるユーザー体験の向上やリピーターの獲得も期待できます。これは、PDCAを継続的に実践することでECサイトに対するユーザーの不満点を改善し続けられるためです。ECサイトで目的の商品へ思うようにたどり着けなかったり、決済方法がスムーズでなかったりするとユーザーが離脱してしまう確率が高まります。そういったECサイトの課題を解決するためにPDCAサイクルを継続的に実施すれば、商品ページの最適化が進み、スムーズな決済を実現し、ユーザーのストレス軽減とリピート率の向上につながります。

加えて、ECサイトでPDCAサイクルを実施することは、目標達成力の向上やノウハウが蓄積されるといったメリットもあります。ECサイトでPDCAサイクルを実施する過程では、施策による成功や失敗の要因を深く掘り下げる必要があるため、実行者は単なる作業者から学習者に変わるからです。ある雑貨系ECサイトの運用者は、購入率が低いのは漠然とECサイトの商品画面のデザインがよくないと考えていましたが、ECサイトのデータを分析することにより、決済方法を選択する画面で離脱しているユーザーが多いことがわかりました。そして、送料無料ラインの設定や決済方法の多様化などの施策を実施したところ、売上アップを実現させることができました。このことにより運用者は、ECサイトの表面的な結果ではなく、ユーザーの行動から課題を特定し解決するといったスキルが身につきました。

ECサイトでPDCAサイクルを実施するメリット

◎ECサイトでPDCAサイクルを実施する成功ポイント

ECサイトの売上アップを目的としたPDCAサイクルを成功させるには、Plan計画、Do実行、Check評価、Action改善のそれぞれに外せないポイントがあります。実行に移すためには、計画は具体的な数値を設定する必要がありますし、ユーザー視点での評価、改善は極めて重要です。

〇課題を特定するためのデータを集める

現状分析は効率的かつ効果的に売上アップを実現するために極めて重要な要素です。ECサイトの現状を正確に分析できていないと、PDCAサイクルを実施するための適正な目標値の設定ができません。分析するデータはただ闇雲に集めるのではなく、ECサイトの売上を構成する要素のどこに課題があるかを特定するためのデータを集めるのがポイントです。ECサイトの売上は「集客数(アクセス数)×購入率×客単価」で構成されるとされています。これらの数値を正確に把握し直近3か月と前年同月のデータと比較するのが一般的な方法です。設定した目標値を先ほどの公式に当てはめて逆算すれば、目指すべき具体的な数値を算出できます。たとえば、現在のECサイトの状況が、「月間のアクセス数10000人×購入率1.0%×客単価10,000円」とすれば、月間売上は100万円となります。半年後までに月間40万円の売上アップを目標値に設定した場合、ECサイトの集客数と購入率を20%ずつアップできれば月間の売上が約140万になり、目標の40万円の売上アップが達成されることがわかります。このとき、どの数値を改善するかは、業界平均や競合他社の推定値、または過去の改善施策のデータと比較し、最も低い水準にある指標などで特定することができます。

〇具体的な目標値を設定する

ECサイトでPDCAサイクルを実施する際、具体的な目標値の設定は極めて重要です。なぜなら目標値がないと、実施した施策が成功したのか、それとも失敗だったのか、その効果を図ることができないからです。目標値を設定するには、まず、最終的に何を、いつまでに、どれくらい達成するのかを設定します。ECサイトの売上アップが目的の場合、「半年後までに、ECサイトの月間売上を40万円アップさせる」など具体的な数値を設定します。加えて、設定する数値は低すぎず高すぎずの範囲で設定することがポイントです。簡単に達成できてしまうような努力を必要としない目標では、達成しても大きな喜びにはつながらず、ECサイトの停滞につながります。一方目標が高すぎると、どうせ達成できないと感じ、諦めや疲弊感につながる恐れがあります。少し頑張れば手の届きそうな範囲で目標値を設定すると、努力の方向性がイメージしやすくなり、現実的な見通しがあるため挫折しにくく、モチベーションを維持しやすくなります。

〇最も低い数値から改善する

戦略を立案することは、単に何をやるかタスクリストを作ることではなく、何を目指し、そのために何が最も効果的かという根本的な道筋を定めることが大切です。また、どの数値を優先的に伸ばすかはECサイトの現状や課題によって変わりますが、効率よく売上を伸ばすためには現状最も低い数値となっている成果指標から改善するのがポイントです。たとえば、ECサイトへのアクセス数が極端に少ない場合、まずはアクセス数を伸ばす施策を優先します。また、アクセス数は十分あるのに、購入率が1%を下回っているなど極端に低い場合は、ECサイトの使いやすさや、商品ページの改善など、購入率を上げる施策を優先させると効果的です。アクセス数も購入率も悪くないのに、売上が伸び悩んでいる場合は、平均顧客単価を上げる施策を検討しましょう。関連商品やおすすめ商品を表示させるレコメンド機能の導入やセット販売、送料無料ラインの設定も大変有効です。

〇実行の過程を記録に残す

ECサイトのPDCAサイクルの実行段階において、まずは施策を計画通りに行うことが何よりも重要ですが、もし計画通りに実行できなかった場合は、なぜ実行できなかったか、その理由を記録に残すのが重要なポイントです。たとえば、システムの不具合やリソース不足など、さまざまな理由がありますが、結果を正しく評価するためには、実行プロセスに関する正確なデータが必要となります。ECサイトで実施する施策の前後で、数値的変化を漏れなく記録する、購入者からのフィードバック、お問い合わせ内容、施策実行中の現場での気づきや課題など、数値化しにくい情報も記録に残します。いつ、誰が、何を、どの期間行ったかを明確に記録することにより、効果が出た、または出なかった原因を特定することができます。実行した施策の結果を評価する際、なぜ購入に至らなかったかなぜリピートしたかなどといったユーザーの声は、施策の有効性を判断し、次の改善を行う際の非常に貴重なデータとなります。

〇評価と改善はユーザー視点を重要視する

PDCAのCheck評価、Action改善において最も重要なポイントは、単にECサイトのデータだけを見るのではなく、ユーザー側の視点に立って原因を特定することです。なぜならユーザーのニーズや不満、実際の行動データを把握せずに改善策を決めると、施策が的外れになることが多く、期待した効果を得られないリスクが高まるからです。評価段階でユーザーのフィードバックや利用状況を分析することで、現状何がECサイトのボトルネックとなっているか、どの部分がユーザーにとって使いにくいのか、トップページの導線や購入フロー、各ページの説明不足など具体的な課題が見えてきます。また、ヒートマップ等の自動計測ツールやカスタマーサポートへの問い合わせ分析などを用いれば、実際のユーザー行動や評価を細かく観察することができます。加えて、第三者にECサイトを実際に使用してもらうこともボトルネックを知るうえでは非常に有効です。「このボタンがクリックできると思わなかった」「このアイコンの意味がわからない」など、設計者が気づかないデザインの誤解を発見することは、ユーザー視点を重視した改善につながります。

ECサイトでPDCAサイクルを実施する成功ポイント

◎ECサイトにおけるPDCAサイクルは高速回転がカギ

ECサイトの売上アップを達成するには、短期間で多くのPDCAサイクルを回すことが近道です。近年、ECサイト市場のトレンドや消費者ニーズは非常に速いスピードで変化しています。競合ECサイトの動きも非常に活発なため、ECサイトの売上アップを達成するには、短い期間で施策を試し効果を測定し、改善していく機動力が必要です。小さな仮説や施策を頻繁に試し、仮説検証から最適化まで素早く進めることが競争優位をもたらします。また、短期間で多くのPDCAサイクルを実施することは失敗による損失の最小化にも効果を発揮します。PDCAの施策が期待通りの効果を上げなかった場合でも、サイクルが短ければすぐに方向転換できるため、無駄なコストや時間の投入といったリスクを最小限におさえられます。

高速でPDCAサイクルを実施するためのコツは、計画、実行を小さくし、評価する指標を絞り込むことです。たとえば、「今週は特定の商品Aのカート投入率を0.2%上げる」という目標にした場合、現状のECサイトのデータをもとに離脱率の理由についての仮説を立てます。「サイズ情報がわかりにくい」という仮説を立てた場合、サイズがわかる画像を商品ページの上部に挿入します。そして、検証評価する指標をPDCA施策実施後のページ上部での離脱率に絞ります。そこから得られた結果をもとに、次の目標を立てます。このような短い期間での小さな改善の積み重ねは、やがて大きな成果につながるでしょう。

ECサイトにおけるPDCAサイクルは高速回転がカギ width=

◎まとめ

ECサイトにおいてPDCAサイクルを実施することは、施策の優先順位を明確にし、最短距離で目標達成を目指すことにつながります。計画や実行を小さくし、ユーザー視点での改善をしながら、短期間で多くのPDCAサイクルを回すことが成功への近道です。PDCAサイクルを上手に活用して、ECサイトの売上アップを目指しましょう。

◎第105回 売上アップへの近道!ECサイトでPDCAサイクルを回す成功ポイント