EC売上アップ術

◎第101回 ECサイトの売上アップに欠かせないロイヤルティプログラムとは

ECサイトの売上アップにおいて、ロイヤルティプログラムの導入は欠かすことのできない施策となっています。ロイヤルティプログラムの導入は顧客との関係性を深めることによるリピート率の向上が期待できますが、効果を出すためにはいくつかのポイントがあります。この記事では、ECサイトにおけるロイヤルティプログラムの重要性から種類や活用方法、売上アップにつなげるポイントなどご紹介します。

 

◎ECサイトにロイヤルティプログラムが欠かせない理由

ロイヤルティプログラムとは、既存顧客を優良顧客へ育成し、囲い込みを行うことなどを目的とするマーケティング戦略のひとつです。日本語に訳すと忠誠心となるロイヤルティ。近年、競合他社がひしめき合うEC業界において、ロイヤルティの獲得は売上を伸ばすための非常に重要な要素となっています。 ロイヤルティを獲得できれば、顧客は愛着や信頼といった強い結びつきをECサイトやブランドに対して抱き、継続的なリピート購入や人におすすめするといった具体的な行動につながります。

ロイヤルティプログラムの一般的な例としては、航空会社のマイレージサービスやクレジット会社の商品交換可能なポイントプログラムがあげられ、大手のECサイトでもポイント付与や会員登録による特典などが活用されています。ロイヤルティプログラムにより、製品やサービスを利用してポイントや割引特典などの報酬が得られた消費者は「次もこのECサイトを利用したい」「ほかの人にも紹介したい」と自然と思うようになります。こうしてECサイトに愛着が湧いた顧客はファンになり、優良顧客の育成につながります。優良顧客は価格だけで判断しないため、競合のECサイトへ流出する可能性が低くなります。ファン化した優良顧客のポジティブなSNSや口コミへの投稿は、有料広告の効果を上回るため、ECサイトの新規顧客獲得による売上アップやプロモーションコストの削減にも貢献します。

ECサイトにロイヤルティプログラムが欠かせない理由

◎ロイヤルティプログラムの種類

ポイント機能は、ECサイトにおいて最も一般的で基本的なロイヤルティプログラムです。 新規の会員登録や商品を購入した顧客にポイントを付与することにより、リピート購入につなげる効果があります。また、購入金額や回数など、段階に応じてポイント付与率を設定したり、ポイントの一部を慈善団体へ寄付できる仕組みにしたりとさまざまな活用方法があります。ゲーム感覚でミッションをクリアしていくとポイントが付与される仕組みのロイヤルティプログラムは、顧客が達成感を味わいながら参加できることで、継続的な参加につながります。

会員ランク制度は、ECサイトでの購入金額や回数に応じて会員ランクを設け、ランクごとにポイント付与率を変えたり、特別な特典を提供したりするロイヤルティプログラムです。顧客のECサイトにおける累計購入金額や購入回数に応じて会員ランクを設け、ランクが上がるごとにボーナス特典を用意することで、顧客の達成感や優越感を刺激します。無料会員のほかには月会費や年会費などを設定した有料会員制度のロイヤルティプログラムがあります。ECサイトの有料会員になることで、ポイント付与率が上がったり、有料会員限定のキャンペーンやイベントへ参加できるようになることで顧客のロイヤルティ向上につながります。

ロイヤルティプログラムの種類

◎ロイヤルティプログラムの効果的な活用方法

ECサイトにおける、段階的なポイントシステムは、特定の目標を達成した顧客に特別な報酬を与えるロイヤルティプログラムです。段階に応じて付与率を設定すると、顧客は「このECサイト利用すればするほどお得になる」と感じ、次のポイントレベルを目指すモチベーションが生まれます。また、ECサイトの新規会員登録時に次回以降に使用できるボーナスポイントを付与したり、ポイントに有効期限を設けたりすることで、顧客のリピート購入の可能性を高めます。また、特定の商品やキャンペーン期間中に、通常よりも多くのポイントを付与すれば購買意欲を高める効果も期待できます。たとえば、毎月1日はポイントアップデーなどとし、ポイントの付与率を5倍にすれば、顧客は「その日にまとめ買いをしたい」と感じ購買行動の促進につながります。ほかにも、社会貢献活動への参加を特典として提供するロイヤルティプログラムもあります。ECサイトのポイントや購入金額の一部を慈善団体などへ寄付することができれば、購買行動が社会に役立つことで顧客は満足感を得られ、ECサイトやブランドの社会的価値が高まる効果も期待されます。

ECサイトの会員制度は、顧客の「さらに上のランクを目指したい」というモチベーションにつながり、顧客生涯価値を高めます。顧客生涯価値とは、ひとりの顧客が企業のサービスや商品を利用しはじめてから関係が終了するまでの全期間で、その顧客が企業にもたらす利益の総額を示す指標のことを指します。ECサイトにおける新規顧客獲得が困難な現代において、既存顧客との良好な関係を維持させることは、ECサイトの持続的な売上アップにつながるとして注目されている概念です。また、ECサイトの有料会員制度を設け、限定で特別なセールを実施したり、有料会員だけが閲覧できる特別な記事やライブ配信、優先的に商品を購入できる権利を付与したりといった仕組みもロイヤリティの向上には効果的です。無料会員との差別化を図ることにより、自分がその特別なグループの一員であるという感覚が、顧客の優越感や特別感につながります。

加えて、定期的に効果を検証することはECサイトの売上アップにおいて不可欠な要素です。ロイヤルティプログラムの導入により設定した会員制度のリピート率や購入頻度が、非会員と比べてどれだけ高いか、会員の1回あたりの購入金額が、ロイヤルティプログラム導入前と比べてどれだけ増えているか調べることで、有効に機能しているのか確認できます。また、ECサイト全体におけるロイヤルティプログラムへの参加比率は、魅力的なプログラムとなっているかのひとつの指標となるでしょう。

ロイヤルティプログラムの効果的な活用方法

◎ECサイトの売上アップにつながるロイヤルティプログラム導入のポイント

ECサイトでロイヤルティプログラムを導入して効果を出すには、適正なポイント付与率やわかりやすい会員ランクの設定が重要です。有料会員や顧客参加型のプログラムの導入が売上アップのカギとなります。

〇双方にメリットがあるポイント付与率の設定

ポイント系ロイヤルティプログラム導入は、ECサイトのリピート率を高めるうえで効果的とされている一方、付与率の設定などには注意が必要です。それは、ポイント付与率が高すぎたり、ポイントが利用されるタイミングを見誤ったりすると、ECサイトの収益を圧迫してしまう可能性があるからです。競合他社に勝つために無理な還元率を設定した結果、ポイント費用が予想以上に膨らむと、赤字に転落しかねません。また、ECサイトのポイントだけが目当ての顧客は、価格のみで判断することが多いためリピート購入にはつながりにくいといった点にも注意が必要です。

しかし、付与されるポイントが少なすぎたり、交換できる商品が魅力的でなかったりすると、顧客は「わざわざポイントを貯める価値がない」と判断し、ロイヤルティにはつながらない可能性も考えられます。また、期間限定ポイントなどを大量に付与した結果、有効期限直前にアクセスが殺到し、ECサイトのシステムがダウンしたり、キャッシュフローが悪化したりするといった事例も考えられます。これらのことから、ポイントの効果的な付与率やタイミングの設定は、ECサイトの売上アップにおいて、非常に重要なポイントといえるでしょう。

〇わかりやすい会員ランクの設定

ECサイトに会員ランクの制度を設定すると、購買行動へのモチベーションアップにつながります。しかし、会員ランクの昇格条件は複雑になりすぎないよう誰でもわかりやすい条件で決定することが大切です。会員ランクアップの条件が複雑すぎると、顧客は手間だと感じ、積極的に参加しようとしなくなります。そもそもルールが理解できないと、モチベーションは生まれません。ECサイトの会員ランクが上がるにつれて優遇措置を提供する際は、過去6ヶ月間の購入金額や購入回数など、顧客自身が把握しやすい指標を使うのが大切です。また、目標があまりにも高すぎると顧客のモチベーションを下げ、逆に達成条件があまりにも簡単すぎるとランクの特別感が薄れてしまいます。顧客が「頑張れば届きそう」と感じる絶妙なラインを設定することも重要です。

加えて、上位ランクの会員には、限定特別セールへの招待や、新商品の先行体験といったECサイトにおける特別なサービスを提供し、顧客に特別感や優越感を与えることもECサイトの売上アップにおいて効果的な方法です。上位ランクの会員になることは、その企業やブランドへの貢献度が高いことの証明になり顧客の社会的な承認欲求を満たす効果があります。顧客はコミュニティの特権をもつ一員になることで、そのブランドへの帰属意識が強まるでしょう。

〇有料会員限定プログラムの導入

ECサイトにおける有料会員制度は、会費を支払うことで通常会員にはない割引や限定コンテンツや特別配送などの特典が利用できるようになるロイヤルティプログラムです。単なるポイントの付与や会員ランク制度とは異なり、顧客とECサイトの間に、より深い関係を築くことを目的としています。顧客は支払いと同時に、ランクや購入実績に関係なく、すぐに特典を受けられるため、無料会員の「頑張ってECサイトでの購入実績を積む」というステップをスキップできます。会費は月額または年額で設定されることが多く、ECサイトにとって物販以外の安定した収益源ともなり得ます。

あるアパレルブランドでは、月額500円程度の会費で通常会員よりも多くのポイント優遇を受けられるプレミアム会員制度を導入し、顧客の囲い込みを図っています。自社ECサイトの主要な既存顧客層が「この会費を払う価値がある」と感じられるような、明確で魅力的な特典は何かを分析し提供することが導入を成功させるポイントです。また、増加コストとの費用対効果の検証も押さえておくべきポイントです。たとえば、特典を送料無料にした場合、それにかかるコストが、会費の収入と有料会員の購買行動の増加によって相殺されるか、またはそれを上回るか、慎重にシミュレーションする必要があります。

〇顧客参加型プログラムの導入

ECサイトにおける顧客参加型のロイヤルティプログラムの導入は、商品レビューや口コミなどを投稿した顧客にポイントを付与し、UGCの増加によるECサイトの活性化を図ることが目的です。 UGCとは、顧客が自ら制作、投稿したコンテンツ全般のことを指します。たとえば、SNSの投稿、口コミサイトへのレビュー、ブログ記事の投稿などがあげられます。たとえば、あるアウトドアブランドでは、ECサイトに「キャンプスタイル投稿」のコーナーを設置して、顧客が自分のキャンプ写真を投稿できるようにしています。これは、投稿されたUGCを通じて、ほかの消費者が商品を使っているリアルなシーンを見ることができ、商品の実用性や魅力を感じやすくなるといったメリットがあります。UGCは企業が一方的に発信する広告とは異なり、顧客のリアルな体験や声が反映された情報であるため、信頼性が高く、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。

一方で、質の悪い投稿を防ぐ対策を事前に講じておくことは ECサイトへの導入において重要なポイントです。どのような投稿が好ましいか、あるいは禁止されているのかを具体的に明記したガイドラインを作成したり、質の高い投稿に対してより多くのポイントを付与するなどのインセンティブを設けたりすると効果的です。顧客が自発的に提供してくれるフィードバックは、新商品開発やサービス改善のための貴重なデータとなるため、ECサイトの運営において貴重な材料となるでしょう。

ECサイトの売上アップにつながるロイヤルティプログラム導入のポイント

◎まとめ

ECサイトの売上アップにおいて、ロイヤルティプログラム導入は欠かせない要素です。ポイント付与や会員ランク制度は、顧客の購買意欲を高め、リピート購入につながります。また、有料会員や顧客参加型のプログラムの導入は、顧客との深い関係性の構築に貢献します。ロイヤルティプログラム導入後は定期的に効果を検証しながら、ECサイトの継続的な売上アップにつなげていきましょう。

◎第101回 ECサイトの売上アップに欠かせないロイヤルティプログラムとは